研究概要 |
Fisher-Bingham 分布の正規化定数に現れる Fisher-Bingham 積分というものがある.Fisher-Bingham 積分は球面上で exp 関数を積分するようなものであり, 複数のパラメータを持つ. このパラメータを動かして, この積分の極小値を求める方法のひとつとして, "holonomic 勾配降下法" というものがある.これは目的関数の満たす微分方程式系から最適値を求めるものである. 2011 年の論文では, 2 次元の Fisher-Bingham 積分に対してまでしか, この手法は適用できなかった.それは, 積分の満たす微分方程式系を Pfaff 系と呼ばれる 1 階の微分方程式系に変形する計算が非常に困難であったことによる. 2014 年の論文では, Pfaff 系の計算について理論的な結果を用いることによって, さらに高次元(7 次元まで)の Fisher-Bingham 積分に対して, "holonomic 勾配降下法" を適用することが可能になった. 一般の n 次元の Fisher-Bingham 積分の満たす微分方程式系について, ある良い項順序を設定することにより, グレブナー基底を決定することができた. そのグレブナー基底を用いると, この微分方程式系の holonomic rank (解空間の次元)を決定することができた.(2014 年の論文) さらに, このグレブナー基底を決定する際に用いた方法を他の微分方程式系に適用することができ,Lauricella の n 変数超幾何微分方程式系や, Kampe de Feriet の 2 変数超幾何微分方程式系についても, 良い項順序を設定する事により, グレブナー基底を求めることができた.そして, そのグレブナー基底を用いることで, holonomic rank や特異点集合などを決定することができた.
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