研究概要 |
辺着色グラフに(g,f)-異色全域木が存在するための必要十分条件を発見した。 "全ての辺の色が同じ"部分グラフのことを単色部分グラフという。一方、単色の逆、即ち"全ての辺の色が異なる"部分グラフの存在を調べる研究がここ十数年の間で流行を見せている。"全ての辺の色が異なる"部分グラフのことを異色部分グラフという。過去に私は、グラフ理論の辺着色分野における難問"BH予想"を解決するための新たなアプローチとして、異色部分グラフの定義を一般化し、f-異色部分グラフと名付け、「辺着色グラフにf-異色全域木が存在するための必要十分条件」を発見した[Suzuki, 2011, Graphs Combin.]。 本研究では、まずf-異色部分グラフの更なる一般化として(g,f)-異色部分グラフを次のように定義した。関数g,f:色集合→非負整数集合に対し、どの色cの辺もg(c)本以上f(c)本以下であるような部分グラフを(g,f)-異色部分グラフと呼ぶ。(g,f)-異色全域木はf-異色全域木でもあるので、少なくとも前述の「辺着色グラフにf-異色全域木が存在するための必要十分条件」を満たしていなければならない。本研究では、それに加えてどのような条件があれば「辺着色グラフに(g,f)-異色全域木が存在するための必要十分条件」となるかを研究し、次の定理を得た。 「色集合Cの色で辺着色されたn頂点のグラフGにm個の連結成分からなる(g,f)-異色全域林が存在するための必要十分条件は、任意の色c∈Cについてg(c)≦f(c)であり、m≦n-Σ(c∈C)g(c)を満たし、さらに、任意の色集合R⊆Cについて、Rに含まれる色の辺を元のグラフGから全て除去したグラフの連結成分数が高々min{m+Σ(c∈R)f(c),n-Σ(c∈C-R)g(c)}個となることである。」
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成25年度)の計画は次のとおりである。 A.異色全域木の既存の定理を拡張する。 完全グラフや完全二部グラフに関する異色全域木の定理を(g,f)-異色全域木に関する定理に拡張したい。gやfがどのような条件ならば(g,f)-異色全域木が存在するのかを明らかにしておくことは、次年度の研究のために重要である。証明は背理法で行うため、前年度の研究課題1の必要十分条件を利用できる。具体的には、(g,f)-異色全域木が存在しないと仮定した時に必要十分条件を満たさないことを利用できる。この証明法は過去に申請者がf-異色全域木が存在するための必要十分条件を用いて、異色全域木の既存の2つの定理を拡張した時と同じ手法である。 B.他の異色部分グラフについても既存の定理を拡張する。 異色部分グラフの研究は全域木以外にもパスやサイクルなど色々なグラフについて研究されている。本研究で提案する一般化によって、それら既存の異色部分グラフの問題が全て(g,f)-異色部分グラフの問題に刷新でき、それら全ての問題において、関数g,fの条件による段階的な研究ができるようになり、新たな着色分野の開拓が期待できる。これは、過去に1-因子(完全マッチング)から始まった因子研究分野が(g,f)-因子という新定義の登場によって飛躍的に発展した歴史と非常に良く似ている。 アルゴリズム開発と実験プログラム:数学研究ではコンピュータによる実験も有効である。様々な(g,f)-異色部分グラフを出力するプログラムを作成しその出力結果から何らかの共通点や証明の手がかりを探る。プログラムの作成は研究室の卒論生(毎年2~4名)に担当してもらう。研究で得られた(g,f)-異色部分グラフの存在定理を元に、発見アルゴリズムを開発しプログラムで実装してもらい、その出力結果を参考に新たな仮説や予想を立てたり、証明のアイデアを得ながら研究を進めていく。
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