研究課題/領域番号 |
24740069
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
宮田 庸一 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (10514250)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統計的漸近理論 / ベイズ統計学 |
研究概要 |
ベイズ統計におけるモデル選択、推定、予測のために使用される周辺尤度、事後平均を漸近的に近似する一つの方法としてラプラス法がある。 平成24年度は、ベイズ型情報量基準の導出をするために使用される最尤推定量(MLE)を含む推定量のクラスとして、log posteriorのパラメーターに関する導関数のゼロベクトルに収束する速さが$O_{p}(1/\sqrt{n})$であるクラスを考えた。さらにこのクラスの推定量(漸近的なモード)を用いたラプラス近似を導出した。ここでnは標本の大きさを表すものとする。 特に$1/n$のオーダーの項までを明示して、この近似法が妥当性を持つための条件を明らかにした。これは研究目的①(若手(B)-2)に対応する結果である。 さらに通常の事後密度関数を拡張して、事後分布がexp{-n×コントラスト関数}×事前密度と表すことができるときの、周辺尤度タイプの関数に対するラプラス近似を$1/n$のオーダーの項まで明示して、この近似法が妥当性を持つための条件を明らかにした。またある条件のもとで、コントラスト関数のパラメーターに関する導関数をルートn一致推定量、もしくは擬真値で評価したときに、それらがゼロベクトルに収束する速さが$O_{p}(1/\sqrt{n})$であることを証明した。 これはルートn一致推定量、もしくは擬真値でラプラス近似が可能であることを意味しており、この拡張により、最尤推定量が数値的に求めることが困難な統計モデル、もしくは尤度関数を明示することが困難な統計モデルに対してラプラス近似を適用することを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の若手研究(B) 研究計画調書の平成24年度(若手(B)-4)では (1) 周辺尤度に対して, 最尤推定量を含む広いクラスの推定量を用いたラプラス近似を行い, ベイズ型情報量基準を導出する. (2) (1)の情報量基準がモデル選択に関する一致性を持つための条件をKass and Vaidyanathan (1992)と同様の手法にて検討を行う. を行い、論文を作成することが計画されていた。 (1)は達成することができ、現在論文の作成を行っている。しかし論文執筆の際、対数尤度のヘシアンが収束しない場合においてもラプラス近似の有効性を示す例を準備する必要が出てきており、さらに事後密度関数の微分可能性の条件を緩めることが可能かどうかを検討しているため、(2)の研究にはまだ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
若手研究(B) 研究計画調書4ページの研究計画(1)に記述されている, 最尤推定量を含む広いクラスの推定量を用いたラプラス近似(即ちベイズ型情報量規準)に関する論文を完成させることを目標にする。 しかし対数尤度のヘシアンの収束を仮定しないロジスティック回帰モデルに対してもラプラス近似が適用できることを示すため、まずはこのモデルがラプラス近似の妥当性を保障する正則条件を満たすことを確認することが第1の目標とする。 その後、(1)の情報量基準がモデル選択に関する一致性を持つための条件を下記の文献を研究することにより検討を行う。 Kass and Vaidyanathan (1992) Journal of the Royal Statistical Society, Claeskens and Hjort (2008) Model Selection and Model Averaging, Shibata (1985) in Essays in Time Series and Allied Processes, Shibata (1980) The Annals of Statistics. さらにGARCH(1,1)モデルにおいては、パラメーター空間に制約を与えることにより、周辺尤度に対するラプラス近似の妥当性を持つことの確認を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、主に下記の計画に使用することを予定している。 (I) 研究上必要となる確率論、統計学に関連する書籍を購入する予定である。一方で周辺尤度に対して, 最尤推定量を含む広いクラスの推定量を用いたラプラス近似の妥当性を議論する上で、実解析学、関数解析、位相空間などの知識が必要になる箇所がある。このため、統計学関連書籍に加え、数学関連の書籍の購入を検討している。 (II) 周辺尤度に対する近似の精度を確認するためのシミュレーション作業を効率的に済ませるためにコンピューターの購入を検討している。またシミュレーション作業を補助員を早稲田大学理工学研究科 鈴木研究室の大学院生に依頼する。 (III) 統計関連学会、日本数学会など主要な学会に出席、発表することで、最新状況の収集および本研究に関する意見の収集を行う。
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