研究実績の概要 |
ベイズ統計学において,ラプラス法は関数の事後平均,モデルの周辺尤度など積分で表される量に対して容易に計算でき, かつ高速で近似を与える. 特にモデルの周辺尤度に対するラプラス近似は直接ベイズ型情報量規準を導出する.ラプラス近似を導出するためには被積分関数の正確なモードが必要になるが,実際にはパラメーターの個数に対して標本の大きさが十分に大きくない場合,被積分関数が非線形の関数である場合は,正確なモードを求めることが難しい場合がある. 申請した研究の目的は, 正確なモードに漸近的に近い振る舞いをする量を用いてラプラス近似が導出できることを明らかにすること,その漸近誤差を厳密に評価すること,および種々の統計モデルに応用することであった. 最終年度に実施した研究の成果:これまでの研究により,ラージオーダーnのマイナスα乗 (ただしα≧1/2) の漸近的なモードを用いてラプラス近似を行った場合, その漸近誤差がラージオーダーnのマイナスα乗になることを確認した. ここでnは標本の大きさを表す. またその近似を用いることにより, 任意の関数の事後平均に対して完全指数型ラプラス近似を導出した. この手法の良い点は,Tierney and Kadane (1986)と同じ漸近誤差を持ち, もしルートn一致推定量が陽に表すことができれば,提案した近似は陽に表すことができるという点である. 一方で,この近似を用いることで,任意の関数gの事後平均の一致性,基準化された事後平均の漸近分布を導出した. これはすでに多くの研究者により提案されているが,我々の結果は,推定に用いるモデルが誤特定されている場合,非コンパクトなパラメーター空間においてより確かめやすい条件として与えられることを確認した. またこれらの結果をGARCHモデル, 一般化線形モデルに対して適用した.
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