研究課題/領域番号 |
24740077
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
阿部 俊弘 東京理科大学, 工学部, 助教 (70580570)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流(スペイン) / 国際情報交換(スペイン) / 国際情報交換(フィンランド) |
研究概要 |
ある地点における渡り鳥の移動方向を記録したデータや風向などを記録したデータは、円周上に値を取るデータ(円周データ)とみなすことができ、これらを対象とする統計学は方向統計学といわれている。平成24年度はこの方向統計学における理論面と応用面の研究を行った。 まず、理論面では、柔軟な対称分布族が提案されている一方、近年では非対称性を示す分布族の提案もされるようにもなってきている。そのようなものとして、頂上付近で平坦もしくは急傾斜の性質を持つPapakonstantinouの円周分布族を拡張した研究(Abe, Pewsey and Shimizu, 2009)がある。この研究を土台にして、我々はさらに、対称な円周分布族の頂上付近を平坦もしくは急傾斜の性質を持たせる対称・非対称な変換の一般式を考え、論文にまとめた。その論文は2013年に掲載される予定である。 円周分布の応用として、次のような成果が得られた。 まず、風害は森林の更新に大きな役割を果たしており、森林の世代交代は、嵐による撹乱が契機となり、樹木の倒壊方位の分布は、過去の風害の傾向や強度を反映していることが予想される。特に、北方林では一斉倒壊・一斉更新があるが、その倒壊の度合いはこれまでの統計的手法では解析する手立てない。我々は、森林の過去の状態や、地域毎の倒壊パターンをモデリングを行い、論文にまとめた(2012年7月、9月掲載)。また、その観点の研究の発展を考えるために、Kuuluvainen教授、Aakala博士と打ち合わせも行い、データからどのような解析結果が出せるか検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度内で申請者が筆頭著者を担当している論文「Circular distributions of fallen logs as an indicator of forest disturbance regimes, Ecological Indicators」と「Sine-skewed axial distributions with an application for fallen tree data」がそれぞれ、生態学で国際的に権威のある学術雑誌であるEcological Indicators、数理統計学で国際的に権威のある学術雑誌であるEnvironmental and Ecological Statisticsに掲載され、さらに、「Extending circular distributions through transformation of argument」が数理統計学で国際的に権威のある学術誌であるAnnals of the Institute of Statistical Mathematicsに掲載予定であることから、予定よりも早く研究が進展しているといえる。 また、国際研究集会での発表を通じて、海外の当該分野で大きな実績を残している研究者らと親交を深めており、計画当初の段階での想定以上の潜在的成果も得られている。これより、今後さらに国際的共同研究を進めていくことが可能になると予想される。 また、当初計画していた予定以上に国際研究集会の発表、国際研究者交流、国際情報交換が行え、さらにこれらを通じて国内の研究者とも情報交換をさらに円滑にできるようになった。 これらを踏まえると、当初の計画以上に進展しており、十分な成果があるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで進めてきた方向統計学における理論的・応用的研究を双方向からさらに推し進める予定である。まず、理論的研究では、Arthur Pewsey博士とディスカッションをし、既存の分布族とは異なる円周分布族を研究していく。具体的には、実軸上の分布である、Fujisawa and Abeのモード不変分布の円周版を考え、その分布族の理論的性質について議論する。またその内容については8月のカナダで行われる国際研究集会” 15th IMS New Researchers Conference”と9月の統計関連学会連合大会で発表する。また、研究の幅を広げる意味でも、昨年のスペイン滞在で知り合ったChristophe Ley博士と国際的共同研究をし、さらに、非対称正規分布で有名なAdelchi Azzalini教授を日本に招へいし、共同研究をしたいと考えている。 応用的研究では、昨年度に引き続き、生態学者のTimo Kuuluvainen教授とTuomas Aakala博士のデータを用い、樹冠の方向データに関する統計解析をした後にディスカッションをし、論文にまとめて投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究発表を国際学会(2013 Joint Statistical Meetings)でするための費用に使用する。
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