研究課題/領域番号 |
24740077
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
阿部 俊弘 東京理科大学, 工学部, 助教 (70580570)
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キーワード | 国際研究者交流(ベルギー) / 国際研究者交流(フィンランド) / 国際研究者交流(スペイン) |
研究概要 |
渡り鳥の移動方向や樹木の倒れる方向を記録したデータは、個々の観測が角度として表されることから、角度データ(または円周データ)とみなすことができ、このような角度データを扱う統計学を``方向統計学”という。具体的なデータの例としては、気象学における風向、渡り鳥の移動方向、毎年周期的に起こる乳幼児突然死(SIDS)の月別データ等がある。当該年度は、理論的研究を中心に行った。 Abe, Pewsey and Shimizu (2009)の分布の一般化として対称な円周分布族を基礎として、頂上付近を平坦もしくは急傾斜の性質を持たせる対称分布族と、それに関連した別の変換を用いた非対称分布族の一般式を提案した。また、形状パラメータの値に応じてモードの数がどのようになるのか、形状パラメータがその分布族の密度関数の頂点における曲率にどのように影響を与えるのかという理論的性質を調べ、特別な場合の円周分布についても性質を調べた。例として、SIDSデータを用いてパラメータの推定、提案モデルの適合度検定、区間推定を行った(2013年10月掲載)。 また、この研究に関連して、Abe, Pewsey and Shimizu (2013)の変換を利用したモードの数を保存するような変換を考案し、現在その内容について研究を進めている。 研究発表としては、モード不変な円周分布族を提案し、発表を通じて国内・国外問わず、多くの研究者とディスカッションができた。また、これに関連して、実軸上の分布論の研究も進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度内で申請者が筆頭著者をしている論文「Extending circular distributions through transformation of argument」が2013年10月に数理統計学で国際的に権威のある学術雑誌Annals of the Institute of Statistical Mathematicsで掲載された。 平成26年度には申請者が第2著者をしている論文「 The sinh-arcsinhed logistic family of distributions: properties and inference」が数理統計学で国際的に権威のある学術雑誌Annals of the Institute of Statistical Mathematicsで掲載される予定である。 当該年度も国際研究集会の発表を積極的に行い、共同研究につなげることができた。 国内でも、研究集会等を通じて、研究者同士の交流を深め、セミナーとディスカッションを行い、研究の幅を広げただけでなく、新しいプロジェクトを進めることができた。 さらに、これまでの論文や発表の実績から、国際研究集会の方向統計学関連のセッションにも何件か招待されるようになった。 以上より、当初の計画以上に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、昨年度、研究打ち合わせを行った海外の共同研究者らとのプロジェクトがいくつかあり、それらを論文にまとめたいと考えている。 一つは、Abe, Pewsey and Shimizu (2013)で考案した変換を利用した、モードの数を保存するような変換を考案し、理論的に扱いやすい分布族を提案し、その理論的性質を調べ、推定・検定がどこまで可能か研究する予定である。このために、Arthur Pewsey博士の下で研究滞在し、論文をまとめる。 もう一つは、研究滞在を行ったChristophe Ley博士と考案したモデルがあり、それに関する研究打ち合わせをし、方向性を決める。 また、フィンランドのTimo Kuuluvainen博士・Tuomas Aakala博士らとの樹木の倒壊方位のモデリングに関する共同研究をさらに進め、データ解析を引き続き行う予定である。 さらに昨年度の研究交流で知り合った国内の研究者らともディスカッションをし、プロジェクトを何件か同時に進めている。これらも論文にまとめ、学会発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究発表の旅費に充てるため 国際研究集会(Advances in Directional Statistics)での研究発表の旅費に充てる。
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