研究課題/領域番号 |
24740081
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前田 昌也 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40615001)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 / イタリア / ザカロフ方程式 / 非線形シュレディンガー方程式 / ソリトン / 爆発解 |
研究概要 |
本年度は非線形シュレディンガー方程式のソリトン解の漸近安定性解析ならびにザカロフ方程式の爆発界の構成についての研究を行った。 非線形シュレディンガー方程式のソリトン解は数学的、物理学的に非常に重要な解であり、その存在、安定性は多大な関心を集めてきた。ソリトン解のリャプノフ安定性については私自身の結果も含めて多くの研究結果があるが、漸近安定性についてはまだわかっていないことが多い。私はCuccagna氏とともにポテンシャル中を高速で運動するソリトン解がソリトン自身と散乱成分に分解すること、つまり漸近安定であることを示した。この結果は現在までに可積分系の方程式と四次の一般化KdV方程式でしか得られていないソリトン同士の衝突の様子の詳しい解析の研究にもつながると考えられる。我々の証明は半線形非線形方程式の手法、ストリッカーツ評価をソリトンの線形化作用素に用いることと線形化作用素の線形減衰しない固有値の成分に対して解析力学的手法であるバーコフ標準形の議論により非線形減衰を示すことからなる。後者の解析力学的手法は新しいものであり、他のハミルトン方程式の爆発解の様子の解析にも使えると考えられる。 ザカロフ方程式の研究では周期境界条件のもとで爆発解を構成した。これにより今まで爆発解の存在が知られていなかった周期境界条件におけるザカロフ方程式も爆発解が存在することがわかった。爆発解は全空間の場合の爆発解をトーラスに貼り付け、誤差項のみたす方程式を解くことによって構成した。この場合の困難は微分の損失と減衰の損失であったがこれらの困難は修正エネルギー法と減衰の損失が起きている箇所と爆発点が乖離していることをもちいて克服した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ソリトンの漸近安定性解析は予想以上に進行した。本年度のソリトンの漸近安定性解析の研究において用いられた解析力学的手法は一般のハミルトン偏微分方程式のソリトン解の漸近安定性解析のみならず爆発解の解析にも応用できると考えられ、ハミルトン偏微分方程式の解の大域挙動に関する研究において新しい強力な研究手法を与えるものとなる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続きソリトンの漸近安定性解析ならびにソリトンをリスケールした形状をもつ爆発解の構成とその性質について研究する。本年度に用いられた解析力学的手法はまだ発展途上であり、本年度の研究の対象となった非線形シュレディンガー方程式のソリトンの漸近安定性解析だけでなく、より一般のハミルトン方程式の特殊解の安定性解析に適用することができると考えている。また爆発解もソリトンをリスケールした形状を持つためこの手法は爆発解析にも用いることができる期待される。今後は本年度に用いた解析力学的手法と半線形偏微分方程式の手法の融合をさらに発展させることを目指す。そのためイタリアのCuccagna氏と緊密に連絡を取り合うとともに国内の研究者たちとも意見・情報交換をし、我々の手法がほかの問題に対して応用できる可能性を探っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初に計画していた昨年秋における京都大学への訪問を次年度に延期することによって生じたものであり、京都大学において中西賢次氏、岸本展氏との研究打ち合わせ・情報交換をすることに必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
|