研究課題/領域番号 |
24740083
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
出口 英生 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (30432115)
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キーワード | ゲーム理論 / 放物型方程式 / 不連続な非線形項 / 安定性 / 進行波解 |
研究概要 |
ナッシュ均衡は、ゲームに参加している各プレイヤーが、他のプレイヤーの戦略を所与として、自分の利得が最大となる戦略をとっている状態である。ゲーム理論において、ナッシュ均衡の概念はゲームの解概念として重要な役割を果たしてきたが、複数のナッシュ均衡が存在する場合、プレイヤーはどのナッシュ均衡をプレイすべきか?という問題に直面する。これを均衡選択の問題という。この問題を扱うために、Hofbauer(1999)は、プレイヤーのランダムな移動を組み込む形で最適反応動学(一部のプレイヤーが現状に対する最適な戦略をとることで社会が動いていくという動学)を修正し、ナッシュ均衡のコンパクト開位相の意味での漸近安定性を用いて空間支配の概念を提案した。ナッシュ均衡が空間支配的であるとは、初期時刻に空間の大部分で他の均衡より優勢であれば、時間無限大でそれは全空間上で支配的となるということを意味する。空間支配的となるナッシュ均衡は高々1つであるので、存在が示せれば均衡選択の基準となり得る。 修正された最適反応動学は、不連続な非線形項を持つ放物型方程式系に対する初期値問題によって記述される。Hofbauerは、簡単のため、拡散係数は戦略と独立であると仮定した。拡散係数が戦略に依存する場合は未だ議論されていない。 そこで、本年度は、拡散係数が戦略に依存する場合のナッシュ均衡の支配関係について研究を行った。特に、戦略数2の対称2人ゲームの場合を考察し、2つの均衡をつなぐ進行波解が存在するための必要十分条件を得た。さらに、進行波解の速度を求め、進行波解に沿ってどちらの均衡が支配的となるかを調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡散係数が戦略に依存する場合を考察し、特定のクラスのゲームではあるが、進行波解を用いた均衡選択の結果を得ることができた。このことから、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
より一般のゲームにおける空間支配性について研究する。戦略数nの2人協調ゲームのあるクラスに対して一般に受け入れられた均衡選択の基準は、最大のナッシュ積をもつナッシュ均衡が好ましいというナッシュ積に基づくものである。このナッシュ積に基づく均衡選択の基準は危険支配の概念の拡張となっているので、最大のナッシュ積をもつナッシュ均衡が空間支配的となることが予想される。このことを念頭に置いて研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張用の航空券が安く購入できたため。 次年度の海外出張の費用にあてる予定。
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