研究課題/領域番号 |
24740089
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
市原 直幸 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70452563)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 確率制御 / 粘性ハミルトン・ヤコビ方程式 |
研究概要 |
本年度は,粘性ハミルトン・ヤコビ方程式の特異摂動問題を考察するための前段階として,粘性ハミルトン・ヤコビ方程式に対する臨界性理論を扱った.考察の対象となるのはエルゴード型粘性ハミルトン・ヤコビ方程式と呼ばれる非線形固有値問題である.これは,エルゴード型の確率最適制御問題に付随して現れる方程式である.本研究では,実数パラメータを持つ粘性ハミルトン・ヤコビ方程式の族を考え,パラメータの値によって方程式の解の性質,特に空間遠方での解の増大度が大きく変化することを示した.具体的には,ある閾値が存在して,パラメータがこの閾値を超えるとき解は1次の増大度を持ち,この閾値以下のときは高々対数関数の増大度を持つことを証明した.さらに,対応するエルゴード型確率制御問題に関して,上で求めた閾値の前後で最適制御過程の再帰性が変化することを証明した.具体的には,パラメータの値が閾値以上のときは最適制御過程が再帰的になり,閾値を下回るときは過渡的となる.証明には確率版リヤプノフの方法を用いた.解の増大度の評価と方程式の凸構造をうまく利用することで,再帰性の判定に有用なリヤプノフ関数を具体的に構成することができた. ここで扱った問題は,方程式の係数が特別な場合は線形シュレディンガー作用素に対する臨界性理論に帰着できる.この意味で,本研究は(線形)臨界性理論の非線形版になっており,古典的な場合においても従来の証明とは異なる証明法を与えている.また,方程式に含まれる実数パラメータを限りなく大きくしたときの極限を考えることで,特異摂動の問題が現れることに注意する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するための準備段階として,粘性ハミルトン・ヤコビ方程式の臨界性理論についての新しい結果を得ることができたため.なお,本年度の研究成果は学術雑誌論文として掲載予定である(研究発表欄参照).
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた研究成果をもとにして,粘性ハミルトン・ヤコビ方程式の特異摂動問題を考察するとともに,本年度の成果から派生する新たな問題についても,その発展可能性を模索する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は研究打ち合わせのための研究費を圧縮することができたので,次年度以降の研究費とあわせて,情報収集および研究打ち合わせのための研究費として使用予定である.
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