研究課題/領域番号 |
24740093
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田原 喜宏 長岡工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (00567901)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ディリクレ形式 / ファインマン・カッツ汎関数 / 大偏差原理 / マルコフ過程 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、これまでの研究に引き続き加法汎関数によって変換されたマルコフ過程の確率解析、とくにその漸近挙動についての研究を行った。この研究により、変数のベキ乗に更に緩変動関数と呼ばれるクラスの関数を掛けた形で表される表象を持つ対称レヴィ過程の連続加法汎関数に対する大偏差原理を証明することができている。さらに金大弘氏、桑江一洋氏とともに行ったエネルギー零の連続加法汎関数と一般化された有界変動な(必ずしも連続でない)加法汎関数の確率解析、とくにそれに対応するシュレディンガー半群の増大度のp独立性と、対応するマルコフ過程の滞在時間分布に関する大偏差原理を証明した。 さらに、本質的スペクトル下限の解析的表現、いわゆるPerssonの定理と呼ばれる、本質的スペクトル下限はディリクレ形式のコンパクト集合の補集合の部分のスペクトル下限の上限で表現される定理を一般のディリクレ形式に拡張する研究を行った。現段階では有効な結果を得られてはいないものの、竹田雅好氏、土田兼治氏と共に共同で問題についての議論を行い、内容については進展している。 また竹田、 土田の両氏とともにマルコフ半群が緊密である場合、半群がコンパクト作用素であるための十分条件に関する研究を行い、これらについての結果は現在論文として纏めている途中である。また、当該研究における主要な測度のクラスであるグリーン緊密な測度について、殆どの場合、例として挙げられるものはコンパクトな台を持つ関数を密度関数として持つ場合のみであった。現在はコンパクトでなく、かつ、可積分でもないような関数を密度関数に持つグリーン緊密な測度の例の構成について考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、主軸としていたPerssonの定理の拡張については目立った進捗を上げられなかった。 しかし土田兼治氏との共同研究によるNearly Stable Processについて、「Differentiability of Spectral Functions for Nearly Stable Processes and Large Deviations」として論文を纏め、これは雑誌「Infinite Dimensional Analysis, Quantum Probability and Related Topics」に掲載された。 また、金大弘氏、桑江一洋氏らとともに行ったエネルギー零の加法汎関数、及び有界変動な加法汎関数の確率解析については、「Large deviation principles for generalized Feynman-Kac functionals and its applications」として論文を纏め、これは雑誌「Tohoku Mathematical Journal」に掲載が決定している。また、これらにまつわる新たに研究対象となりうる問題が発見されている。これらの状況から研究についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Perssonの定理は確率論だけでなくディリクレ形式にまつわる解析学、とくにポテンシャル論において興味深い問題であると考えられる。そのため、Perssonの定理の拡張について今後も研究を遂行する。 また、平成26年度に入ってから新たに考えられた問題であり、研究実績の概要でも述べたが、コンパクトでない台を持つ関数を密度に持つ、あるいは測度有限なグリーン緊密な測度の構成についての研究を行う。これは殆どの場合、グリーン緊密な測度の具体例として挙げられるのはコンパクトな台を持つ関数を密度に持つ測度あったが、グリーン関数の定義から必ずしも台のコンパクト性は必要でない筈である、という動機に基くものであり、興味深い問題であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品、とくに書籍の代金が円相場の変動により予想より廉価で購入できたことや、購入の時期により電化製品の価格が下がったことにより、購入価格について当初より差異ができた。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍及び消耗品であるプリンタトナーやPC関連の物品購入に充当する。
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