研究課題
平成27年度では、前年度からの継続である結晶粒界を研究テーマとし、「自由境界の構造解析」と「非等方的数学モデルの数学解析」の2つを取り組むべき研究課題として、活動を開始した。当初は2つの課題を同時並行で進める計画であり、そのため課題毎に国内外の研究協力者による2つの研究チームを編成した。しかし2つの課題の両方において特有の難しさが潜んでいた事が判り、年度の早い段階において同時並行で課題を進めるプランには難色が示された。更に各チーム内の研究討論では「現象に忠実な幾何学的構造の追跡には非等方性を扱い可能とする数学理論を先に構築すべき」という意見が双方から寄せられた。これらを踏まえ、本年度では推進方策を「リアルな再現状況を追跡可能とする数学理論の構築」と再設定し、この方策に基づき活動内容を非等方的数学モデルの数学解析に絞る方向に、計画を軌道修正した。非等方的数学モデルでは「仮似変分不等式の扱い」と「結晶構造の幾何学的滑らかさの欠如」の2つの困難があったが、本年度では結晶構造に滑らかさを仮定する「緩和モデル」を考案し、緩和モデルの解の存在に関して数学理論による厳密な証明を与える事に成功した。またこの結果については、ICIAM2015 (中国・北京) に代表される3件の国際研究集会と、日本数学会をはじめとする3件の国内の研究集会において、計6回に分けて成果発表を行った。他方で、年度後半ではイタリアのパヴィア大学と研究討論する機会があり、既存の数学モデルに「力学的境界条件」を組み入れるという、新しい研究テーマを開拓する事が出来た。力学的境界条件によって先述の推進方策とも適合するリアルな現象再現モデルが構築出来るため、これにより自由境界の研究では幾何学的構造解析のみならず、最適制御問題等の発展的課題に対しても新しい展望が開かれるものと、今後の展開に期待を寄せている。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件) 備考 (3件)
Dynamical Systems, Differential Equations and Applications
巻: AIMS Proceedings, 2015 ページ: 1009-1018
10.3934/proc.2015.1009
http://kenboich.jp/
http://www.education.chiba-u.jp/approach/facultyact/
http://www.education.chiba-u.jp/home/staffTop/staff_011/