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2012 年度 実施状況報告書

非線形楕円型方程式の解構造の解明と定性理論の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 24740100
研究種目

若手研究(B)

研究機関慶應義塾大学

研究代表者

宮本 安人  慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (90374743)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード非線形楕円型方程式 / 非線形解析 / 分岐理論 / 優臨界
研究概要

今年度は,ソボレフ臨界指数(N+2)/(N-2)(Nは空間の次元)を超える増大度を持つ非線形楕円型偏微分方程式の解の構造の研究を行った.非線形項の増大度が臨界指数を超えない場合,ちょうど等しい場合,超える場合は,それぞれ,「劣臨界」,「臨界」,「優臨界」と呼ばれ,楕円型方程式の解の構造が大きく異なっていることが知られている.劣臨界と臨界の場合は,有効な解析手法が知られており,すでに様々な性質が明らかになっている.しかし,優臨界の場合は,関数解析・実解析・変分法などの一般論を用いて解析することが困難であることが知られており,優臨界の楕円型方程式の解の構造が,劣臨界や臨界の場合とどのように異なるかは興味深い問題であった.いくつかの例外的な非線形項の場合(冪型とBrezis-Nirenberg型)を除いて,詳しい解構造は,現在まで知られていなかった.
そこで,常微分方程式の手法を用いることができる球領域におけるDirichlet境界値問題の正値解の構造の研究を行った.冪型非線形の場合は特殊な変数変換を行い相平面解析に帰着できることが知られているが,一般的な優臨界の非線形項の場合は,そのような変数変換の存在は期待できない.そこで,特異解の存在を証明し,スケーリングの議論を用いて特異解と通常の解との交点数を計算し,解構造を調べる方法を開発した.それを用いて,非線形項の増大度が,優臨界かつJoseph-Lundgren指数より小さいとき,解構造を明らかにすることに成功した.
次に,球領域におけるNeumann境界値問題の球対称解の解構造を研究した.上記の方法は,Neumann境界条件に変えると破たんする議論をいくつも含んでおり,同じ方法を単純に適応はできないのだが,その困難を克服し,増大度が優臨界かつJoseph-Lundgren指数より小さいとき解構造を解明した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Dirichlet境界値問題の場合は,Joseph-Lundgrenの研究によって優臨界の冪型非線形項を持つ場合の解構造がすでに知られており,優臨界Brezis-Nirenberg型の非線形項を持つ場合も複数の海外の研究者たちによって調べられ,すでに知られていた.この2つの研究が指針となるので,一般的な非線形項を持つ場合も,研究前から,解析する手法の目途はある程度ついていた.当初の予定どおり,一般的な非線形項を持つ場合に拡張することに部分的に成功した.具体的には,増大度がソボレフ指数とJoseph-Lundgren指数の間の時に解構造を解明した.
Neumann境界値問題の場合は,Dirichlet問題の場合に有効だった議論の多くが破たんし,先行研究も皆無なので,研究前の段階では,どのようにアプローチしてよいのか見当がつかなった.今年度は,難しいと思われていたNeumann問題について,Dirichlet問題の場合とは異なる新しい議論を用いて,その困難を服した.具体的には,増大度がソボレフ指数とJoseph-Lundgrenの指数の間の場合に,解構造を明らかにした.
Dirichlet問題は,Joseph-Lundgren指数より多きい場合に解決していないが,当初の予定していなかったNeumann問題が部分解決した.合わせると,おおむね順調に進展しているといえる.

今後の研究の推進方策

Dirichlet問題,Neumann問題の2つの問題に対して,非線形項の増大度がJoseph-Lundgren指数より大きい場合の解構造を解明する.
この方面の研究が完了した場合,もしくは難しいことが認識された場合は,他の定性的理論の研究に移る.

次年度の研究費の使用計画

ノートパソコンやデスクトップパソコンなどの機材は既に揃っており,80%(40万円)を旅費に用いる予定である.
具体的には国内出張6回を予定している.残りの20%(10万円)は,プリンターのトナー,パソコンソフト(Office2013等),書籍,文具を購入する予定である.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Monotonicity of the first eigenvalue and the global bifurcation diagram for the branch of interior peak solutions2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Miyamoto and K. Yagasaki
    • 雑誌名

      Journal of Differential Equations

      巻: 254 ページ: 342--367

    • DOI

      10.1016/j.jde.2012.08.001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A planar convex domain with many isolated "hot spots" on the boundary2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Miyamoto
    • 雑誌名

      Japan Journal of Industorial and Applied Mathematics

      巻: 30 ページ: 145--164

    • DOI

      10.1007/s13160-012-0091-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The nonlinear "hot spots" conjecture in balls of S^2 and H^22012

    • 著者名/発表者名
      Y. Miyamoto
    • 雑誌名

      Nankai Ser. Pure Appl. Math. Theoret. Phys.

      巻: 10 ページ: 108--119

    • 査読あり
  • [学会発表] ソボレフ超臨界の非線形項を持つ楕円型方程式の正値球対称解の構造について

    • 著者名/発表者名
      宮本安人
    • 学会等名
      2013年日本数学会年会
    • 発表場所
      京都大学
  • [学会発表] A planar convex domain with many isolated "hot spots" on the boundary

    • 著者名/発表者名
      宮本安人
    • 学会等名
      RIMS研究集会「スペクトル・散乱理論とその周辺」
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 招待講演
  • [学会発表] A planar convex domain with many isolated "hot spots" on the boundary

    • 著者名/発表者名
      宮本安人
    • 学会等名
      RIMS研究集会「偏微分方程式の解の幾何」
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 招待講演
  • [学会発表] 境界に多数のホットスポットがある凸領域の存在について

    • 著者名/発表者名
      宮本安人
    • 学会等名
      2012年日本数学会秋季総合分科会
    • 発表場所
      九州大学伊都キャンパス
  • [学会発表] Stable patterns and Morse index one solutions

    • 著者名/発表者名
      Y. Miyamoto
    • 学会等名
      The 9th AIMS Conference
    • 発表場所
      オーランド(アメリカ,フロリダ州)
    • 招待講演
  • [学会発表] Structure of the positive solutions for supercritical elliptic equations in a ball

    • 著者名/発表者名
      宮本安人
    • 学会等名
      RIMS研究集会「幾何学的偏微分方程式に対する保存則と正則性特異性の研究」
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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