研究課題/領域番号 |
24740100
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮本 安人 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (90374743)
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キーワード | ソボレフ優臨界 / 楕円型偏微分方程式 / 分岐図式 / Dirichlet問題 / 特異解 |
研究概要 |
ソボレフ優臨界の増大度を持つ様々な非線形楕円型偏微分方程式に対して,球対称解の解の構造を明らかにした.この方程式は,変分法を用いた一般論が適用できないため,その解の構造は,いくつか知られている特殊な例を除いて未解明であった.そこで,球領域上の球対称解に制限することによって常微分方程式に帰着させ,常微分方程式の解の詳しい性質と方程式が持つ(漸近的に成り立つ尺度不変性)を用いて,元の偏微分方程式の解の構造を研究した. 平成24年度は,多項式増大する非線形項を持つ方程式のDirichlet問題とNeumann問題にこの方法を適用し成功を収めた.平成25年度は,指数増大する非線形項を持つ偏微分方程式のDirichlet問題を研究した.基本的な研究の方針は多項式増大の場合と同じだが,多項式増大の場合とは異なる尺度不変性を持つため,証明の細部で,新しいアイデアが必要となる個所がいくつかあった.さらに,ハーディーの不等式や比較定理を用いることによって,前年度には分からなかった分岐解が折り返し点を持たない場合に対して,非線形項から決定できる十分条件を得ることに成功した. それらの成果を総合して次の定理を得た:指数増大するある程度広いクラスの非線形項に対して,空間次元が3以上9以下の場合は,無限個正値解を持つ場合があり,10次元以上の場合は,解は存在しないか存在しても高々1つとなる. この結果は,以前から知られていたGel'fand問題の場合と同じである.Gel'fand問題の場合は,特殊な変数変換を用いて証明されるが,一般の場合はこのような変数変換は期待できず,詳しい解の構造は現在まで知られていなかった.ここで得た成果は,Gel'fand問題の性質は,非線形項の摂動によって変わらないことを示しており,解の構造の定性的性質は,ある種の存続性を持つことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
達成できた点:当初は,ソボレフ優臨界の多項式増大度の非線形項を持つ楕円型偏微分方程式の解の構造の分類を目指していたが,それに加えて,指数増大の非線形項を持つ楕円型偏微分方程式の解の構造を明らかにし,解の構造を非線形項によって分類することに成功した.また,当初計画になかった非線形項がべき乗型の退化型非線形楕円型偏微分方程式の解の構造の分類や解の交点数の解析にも,同様の方法が適用できることがわかり,退化型の場合の分類の完成や交点数の決定にも目処を付けた. 達成できなかった点:前年度に挙げた目標は,Joseph-Lundgren指数より大きい場合の解の構造の詳しい性質を明らかにすることだった.この目標は,指数増大のDirichlet問題,多項式増大度の非線形項を持つ楕円型方程式のDirichlet問題では達成できたが,Neumann問題では達成できなかった.Dirichlet問題と同様の方法では解決できず,本質的に新しいアイデアが必要と思われる.また,解構造の分類以外の定性理論の新しいテーマは発見できなかった. 総合して,解構造の解明はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
多項式増大度を持つ非線形楕円型偏微分方程式に関しては,Joseph-Lundgren指数より大きい場合のNeumann問題の詳しい解構造の解明を目指す. また,非線形楕円型偏微分方程式の定性理論の新展開を模索する.
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