研究課題/領域番号 |
24740103
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川平 友規 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (50377975)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 複素力学系 / ラミネーション / ザルクマンの補題 / タイヒミュラー理論 |
研究概要 |
おもに1次元複素力学系とザルクマンの補題について研究した.「複素力学系」とは複素多様体上の,自己正則(複素構造を保存する)写像による力学系である.そのカオス部分は,力学系を生成する正則写像の族が正規族で「ない」ことで特徴づけられる.ザルクマンの補題は関数族の非正規性の判定条件であり,この補題によって生成される有理形関数族やリーマン面ラミネーションを調べることで,力学系の諸問題への応用を目指した. ザルクマンの補題が生成する有理形関数の応用としては,力学系のカオス部分(ジュリア集合)と,パラメーター空間の分岐部分(マンデルブロー集合)の局所漸近的類似性を「力学系ザルクマン関数族」と「パラメーターザルクマン関数族」がいつ共通部分をもつか,という問題で定式化し,いくつかの十分条件を与えた.また,ザルクマンの補題が生成するラミネーションに補正を加え,さらに双曲的リーマン面ラミネーションの変形理論(タイヒミュラー理論)の一般論を適用する方法について研究を行った. その他,来日していたメキシコ国立大学・数学研究所のC.カブレラと共同で中立的周期点をもつ複素力学系についてラミネーション構造の研究を行った.また,台湾中央研究院のY-C.チェンとは,2次多項式族における双曲的ジュリア集合の(ミシュレビッチ型もしくは放物型への)退化を微分方程式系とハウスドルフ次元で記述する問題について共同研究した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度,ザルクマンの補題およびそれが生成するラミネーションについては多くの新しい知見も得られ,概ね順調に進んだ. ただ,5月から8月まで,日本に滞在した共同研究者C.カブレラとの共同研究に集中したが,この期間中は目覚しい成果に結びつかなかったのは残念である.もちろん継続して研究は続けている.
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今後の研究の推進方策 |
研究の方針自体に変更はないが,本年度は大学の諸業務の関係で海外の研究集会に出る機会をもてなかったので,研究成果の発表や新しい研究成果の吸収があまりできなかった.次年度は積極的に海外の集会に参加するなどしたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように,海外での研究発表や海外の研究者との研究交流に重点を置いて使用したいと考えている.
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