(1) 廣惠一希氏(城西大学)との共同研究によって平成24年度に得られた結果をまとめた共著論文が出版された.研究成果は以下の通りである:複素射影直線上の自明束上の有理型接続であって,不確定特異点を高々一つしか持たずそれが不分岐であり,他は全て確定特異点であるようなもののモジュライ空間は,中島箙多様体とシンプレクティック同型である.また平成26年7月にフランスで開かれた国際研究集会に招待され,この研究成果の発表を行った.
(2) 平成25年度に考察した,神保・三輪・上野タウ関数の対数微分のスペクトル不変量としての記述と,それを応用した射影直線上の有理型接続の一般モノドロミー保存変形を支配する非線型偏微分方程式の非自励ハミルトン系としての記述ついて,早稲田大学で開かれた国際研究集会に招待され講演を行った.
(3) Philip Boalch氏(パリ第11大学)との共同研究により,コンパクトリーマン面上の有理型接続の分岐不確定特異点におけるStokes係数,及びその周りの解と基点の周りの解を接続する行列(リンク)からなる組をパラメータ付ける空間の上の擬ハミルトン構造を,単純レベル(形式解の指数関数因子の肩に乗るものが単項式)の場合に構成する事に成功した.一般の場合の擬ハミルトン構造の構成は,不分岐の場合と同様,フュージョンによって単純レベルの場合に容易に帰着される事が期待される.この意味で,平成25年度の研究実施計画における目標が本質的に達成された.
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