研究課題/領域番号 |
24740108
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
眞崎 聡 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20580492)
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キーワード | シュレディンガー方程式 / 時間大域挙動 / 最小爆発解 / 偏微分方程式 / 尺度不変空間 / 有限時間爆発 |
研究概要 |
前年度に予想外な進展を見せた非線型シュレディンガー方程式の質量劣臨界ケースにおける解の時間大域挙動の研究をさらに推し進めた。その結果、前年度で得られた結果を満足のいく形に改良することができた。 本研究は、吸引的なべき乗型の非線形項を持つシュレディンガー方程式に対し、解の時間大域挙動を初期値に関する情報で決定する研究の一環で、質量劣臨界と呼ばれるべきを考えているのが特徴である。具体的な目標は、最小非散乱解と呼ぶべき、自由解のように振る舞う散乱と呼ばれる時間大域挙動を示す解たちと、それ以外の挙動を示す解たちとの境目にある解の存在を示すことが目的である。前年度の結果においては、扱える非線形項のべきに対してストラウスべきと呼ばれるべきが下限として現れていたが、今年度では、実解析的な手法を応用することでその制約条件を弱め、カズナブ・ワイスラーのべきと呼ばれている指数まで弱めることができた。 また、その副産物として、上記の研究において初期値の空間を非斉次な重みつき空間から、尺度不変な重みつき空間にまで広げることにも成功した。尺度不変な空間で方程式が解かれること自身にも数学的な重要性と面白さがあるが、ここでは初期値が2乗可積分でない空間で方程式が解かれた事が重要だと考えており、ここを強調したい。質量劣臨界である場合には、質量保存則から2乗可積分な初期値に対しては解は必ず時間大域的である。一方で、初期値が2乗可積分でなければ有限時間で爆発するような解も存在することが知られている。したがって、解の大域挙動を調べる上では、2乗可積分であるとことはその多様性を制限する条件とみなせる。本研究においては、2乗可積分とは限らない解を考えているため、「散乱以外の挙動を示す解」の範疇に有限時間爆発解を含みうる点が前年度と比べて新しい。この部分は当初の予定以上に進展した部分である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であった量子流体の側面から見た解の構造の研究は、予定通り進んでいるとは言い難い。しかし、前年度の予想外の進展を受けて変更し掲げた今年度の目標に対しては、当初の予想を上回る、大変満足のいく形で達成することができた。具体的には、前年度に得られた非線型シュレディンガー方程式の質量劣臨界ケースにおける解の時間大域挙動の研究結果に対して、扱えるべきの下限として現れていたストラウスべきが、技術的なものであると予想されたため、この制限を緩めることを目標として掲げていた。当該年度の研究において、この目的は達成された。さらに、考える初期値の空間を、非斉次な重みつき空間から、尺度不変な重みつき空間にまで広げることにも成功した。特に、2乗可積分でない設定で方程式が解かれた事が有限時間爆発解も存在しうるという観点から重要である。この意味において、当初の計画以上の進展を見せたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度、今年度の研究は当初の予定とは異なっているが、こちらの研究の方が物理的・数学的に価値が高いと思われるので、今後もこの方向を優先して進めていく。 具体的な研究内容としては、 まず第一に、これまでの研究でその存在が明らかになった最小非散乱解の素性を明らかにすることである。この解は、基底状態などに代表されるソリトン解ではないことが分かっている。これまでに知られていた典型的な非線型挙動のどれにも当てはまらない新しいものである可能性がある。これは数学的な観点ももちろんだが、物理的な観点から非常に興味深い問題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、計画通り研究を実行した。その際の微量の端数が出ている状況である。 平成26年度予算と合わせ、適切に使用する。
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