研究課題/領域番号 |
24740108
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
眞崎 聡 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20580492)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分散型方程式 / 非線型分散型方程式 / 非線型シュレディンガー方程式 / KdV方程式 / 一般化KdV方程式 / 散乱問題 / 最小非散乱解 / フーリエ制限問題 |
研究実績の概要 |
本年度は、質量劣臨界ケースにおける非線型分散型方程式に対する最小の非散乱解に関する考察をさらに進めることを目標として研究を行った。これまでは、非線型シュレディンガー方程式について扱ってきたが、浅水波のモデル方程式であるKdV方程式を一般化した一般化KdV方程式にまで考察の範囲を拡張した。 (一般化)KdV方程式における解の挙動の解析は「ソリトン分解予想」として知られ、大いに興味をもたれている問題である。非線型シュレディンガー方程式における定在波解が、(一般化)KdV方程式におけるソリトン解に対応することは良く知られていて、この二つの方程式は密接に関わっていることが分かっている。近年、KdV方程式の非常に大きな運動量をもつ解が非線型シュレディンガー方程式の解により近似されることが分かり、この点からも関わりがあることが分かってきた状況にある。最小の非散乱解に関しては、特に後者の対応関係と強い繋がりがあり、最小非散乱解を多角的な視点で理解するために重要な研究対象である。 本年度は、KdV方程式に関する取り組みの第一歩として、KdV方程式の専門家である瀬片純市氏と共同で、質量劣臨界ケースにおける解析に適した枠組み作りを行った。より詳しく述べると、ルベーグ空間に属する関数たちのフーリエ変換による像全体という集合(以後フーリエルベーグ空間と呼ぶ)で考えた。フーリエルベーグ空間における適切性問題は、修正KdV方程式で先行研究があるが、私は新たに実解析におけるフーリエ制限問題で現れる評価を導入することにより、尺度不変なフーリエルベーグ空間の枠組みで時空分散型評価を導出することに成功した。質量劣臨界ケースを通常のソボレフ空間で考えると、尺度不変な空間は負の微分階数をもつため非常に困難が伴うが、この手法だと非常に見通しよく解析が行える。現在、この研究は論文としてまとめ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、非線型シュレディンガー方程式の質量劣臨界ケースにおける最小非散乱解の発見、という予想外の進展を初年度に得られたため、当初の計画を変更しこの解の性質を明らかにすることを目標として研究を進めている。 本年度は、問題を多角的にアプローチするために少し視点を変え、非線型シュレディンガー方程式との関係の深い一般化KdV方程式に関して同種の現象がおこるのかを考察した。このためには、いくつかの道具が必要であり、またそれに適した問題の枠組みを設定する必要がある。本年度は、この枠組みの設定の部分を理想的な形で達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、質量劣臨界一般化KdV方程式における最小非散乱解の存在を確かめ、その素性を明らかにすることを目標とする。本年度の研究でこの解析に必要な枠組みを構築することができたため、期待する結果が得られるものと考えている。 凝集コンパクト性の一種であるプロファイル分解定理と、高速で動く波が非線型シュレディンガー方程式の解により近似される部分が解析の鍵になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費として使用する予定であったが、市場価格の変動等により残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度予算と併せて旅費として適切に使用する。
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