研究概要 |
輻射輸送コード ARGOT の並列化を行い, 京コンピュータ上で10000コア程度の並列計算を可能にした. またこのさい, 1000コアを超えたあたりから並列化効率が著しく低下することが判明したため, 並列化アルゴリズムを見直し, 輻射輸送計算そのものの高速化と, 高並列化を実現した. これにより, 世界初の輻射輸送を考慮した銀河形成シミュレーションの準備は整ったと言える. また銀河形成のシミュレーション研究において最も使われている smoothed particle hydrodynamics (SPH) 法の改良を行い, 銀河形成シミュレーションで SPH 法を用いることによって引き起こされる様々な問題を解決した. さらに重力計算の x86_64 上での SIMD 命令セットを利用した高速化も行い, ライブラリとして一般に公開した. 銀河形成においてどのような物理過程が重要な役割を果たすのか, またそれぞれの研究グループが用いている銀河形成モデルの違いにより, 結果はどの程度異なるのかを世界中の研究グループと共同で調べ, 我々のモデルが最も観測を良く再現することを明らかにした. その銀河形成モデルを用いて高赤方偏移銀河の性質を調べ, 観測と比較することにより, 特にサブミリ銀河と呼ばれる種族の性質について調べ, 近傍宇宙の銀河の性質を再現するようなモデルは, 高赤方偏移銀河の性質も統一的に説明できることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
輻射輸送コードに速やかに自己重力計算と流体計算を組み合わせ, 今年度中に孤立銀河で大質量星からの輻射がどのような役割を果たすのかを明らかにする. そこで得られた知見により銀河形成モデルもアップデートし, 宇宙論的シミュレーションを行うことにより, 高赤方偏移銀河と近傍銀河の関係や, 銀河団において銀河と銀河団ガスの進化を統一的に説明できるか調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度途中で筑波大学から北海道大学への異動が決定したため, 計算機等の購入を控えたこと, 異動のために海外出張を1つとりやめたことにより24年度の研究費に未使用額が生じたが, 本年度シミュレーション結果の解析用計算機を購入して当初の予定通り計画を進めていく. 旅費についても, 連携研究者のいる筑波大学や京コンピュータのある神戸への旅費として使用する計画である.
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