前年度に引き続き、自ら開発した輻射流体コードを用いて、宇宙再電離過程とその時期における電離光子源である銀河の形成過程を同時に解き明かす宇宙論的輻射流体シミュレーションを行った。シミュレーションによって形成された銀河の光度関数は、観測可能な明るい銀河の光度関数をよく再現し、未だ観測されていない暗い銀河が多数存在する事を予言する。また、それぞれの銀河から抜け出し銀河間空間の電離に使われる電離光子の割合(電離光子脱出割合)をシミュレーションボックス内の全ての銀河につて調査したところ、低質量の銀河は輻射性フィードバックによって高い電離光子脱出割合を示す事が明らかになり、これまでなされてきた再電離シミュレーションに比べてより暗い銀河が支配的な電離光子源となっている事を示した。この結果は、これまでの再電離シミュレーションと今回のシミュレーションでは電離構造が異なる事を意味し、今後の予定される再電離期のライマンアルファ輝線銀河の観測や中性水素の超微細構造遷移輝線・吸収線の観測による検証が期待される。 また、宇宙で初めて形成される天体であり、宇宙ではじめての電離光子源として期待される第一世代ハロー中心で形成される第一世代星の形成過程解明の為の研究も行い、まずは、第一世代ハローが質量、角運動量などの物理量に関して様々な多様性を持つ事を示した。さらに、多様なハロー内で形成される第一世代星の形成過程を3次元輻射流体シミュレーションで調べる世界初の試みによって、第一世代星は典型的には10-100太陽質量程度である事、この質量は母ハローの角運動量と非常に強い相関を持つ事を明らかにした。第一世代星が典型的に大質量である事実は、再電離初期段階において、第一世代星が重要な役割を果たす事を示唆する。
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