研究課題/領域番号 |
24740115
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石山 智明 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (90616426)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ダークマター / サブハロー / ダークマター検出 / 大規模シミュレーション / 銀河 |
研究概要 |
宇宙初期にはじめに形成した高密度な地球質量程度の天体(最小ハロー)が、階層的な構造形成過程において、より大きなハローの中でどのように進化するかを大規模シミュレーションにより明らかにすることを目的としている。2012年度はまず、申請者らがこれまで開発してきた超並列シミュレーター GreeM を用いて、粒子数640億、領域400pcの超大規模宇宙論的N体シミュレーションを京コンピュータを用いて実行した。このシミュレーションの分解能は3.42e-11太陽質量であり、この規模の領域では我々の知る限り世界最高分解能である。このシミュレーションデータを解析し、最小ハローが合体してできる10-1000地球質量のハローが2000個程度得られた。これらのハローの構造を調べた結果、地球質量のハローは密度プロファイルが半径の-1.5乗程度のべきに比例するが、それが合体してできるハローはべきがだんだん浅くなることがわかった。また大きいハローほどべきがより浅くなることがわかった。 またこうしてできたハローは合体を繰り返すことで成長し、より大きなハローを作り、最終的には銀河や銀河団の構成要素となる。今回我々は、銀河より小さい矮小銀河サイズのハローの構造について、粒子数80億、領域30Mpcの高分解能シミュレーションにより調べた。その結果、ハローの中心集中度はハロー質量に弱く依存するが、小さいハローほど依存性が徐々に弱くなっていくことがわかった。これは銀河や銀河団サイズのハローで得られた中心集中度の質量依存性を使って、矮小銀河やそれより小さいハローの中心集中度を見積もると、ハローの中心密度を過剰に見積もってしまうことを意味する。この結果をアストロフィジカルジャーナル誌にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、10-1000地球質量のハロー形成シミュレーションが完了し、次年度と次次年度の研究への足がかりが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
銀河系サイズまでハローが成長したときに、ハローの構造や最小ハローの分布がどう進化するかを明らかにする。また銀河系内でハローは銀河系内で恒星遭遇による摂動を受ける。恒星との相互作用の結果、ハローの構造がどのように進化するかを明らかにする。 はじめに銀河ハローまで成長した時のハローの構造や最小ハローの分布を明らかにする。シミュレーション結果から10-1000地球質量程度のハローのみを取りだし、同じハローをさまざまな軌道で次々と合体させるシミュレーションを系統的に行い、1太陽質量程度のハローまで成長させる。こうして、地球質量から太陽質量まで6桁程度のハローの微細構造や、最小ハローの分布などの進化過程を明らかにする。本研究で得られた6桁程度の非常に広い質量幅を持つハローそれぞれの、構造の系統的な変化という強力な統計的情報を用いることで、ハローの構造進化や最小ハローの分布の進化を定量化することができ、ボトムアップ的に銀河ハローへと外挿することが可能となる。 次に恒星との相互作用の影響を調べる。先のシミュレーションで得られた最小ハローを取りだし、恒星を遭遇させるN体シミュレーションを行い、恒星の摂動がハローの構造にどのように影響を与えるかを明らかにする。既に1太陽質量の恒星との1回の遭遇の影響を調べるための予備的なシミュレーションを行っており、ハローの極中心部を通過する遭遇以外では恒星遭遇の影響はほとんどないという結果が得られている。この結果を受け、より現実的な銀河系での恒星の質量分布、空間分布を考慮し、さまざまな質量の恒星が繰り返し遭遇した時の最小ハローの構造進化を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
より大きなシミュレーションを行う予定なので、データを格納するためのファイルサーバに100万円程度使用予定。 得られた成果を発表するための旅費として50万円程度使用予定。
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