研究課題/領域番号 |
24740115
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石山 智明 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (90616426)
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キーワード | ダークマター / サブハロー / ダークマター検出 / 大規模シミュレーション / 銀河 |
研究概要 |
2013年度はまず、2012年度に行った粒子数640億、領域400pcの超大規模宇宙論的N体シミュレーションに加え、新たに粒子数640億、領域200pcのシミュレーションを追加で行った。この新しいシミュレーションは2012年度のものより質量分解能が8倍高く、ダークマターハローの密度構造をより精密に調べることが可能である。 この2つのシミュレーションを組み合わせて、最小のハローである地球質量から数百倍地球質量のハローの密度構造を表すフィッティング関数を得た。また以下のことを明らかにした。(i)地球質量のハローは密度プロファイルが半径の-1.5乗程度のべきに比例するが、質量が大きくなるにつれて、べきは徐々に浅くなる。(ii)ハローの形成時刻とべきに大きな相関は見られない。(iii)質量が大きいハローでべきが徐々に浅くなるのは、ハロー同士の合体が主要なメカニズムである可能性が高い。(iv)ハローの内部質量の中心集中度を表すコンセントレーションというパラメータは、現在時刻の宇宙にスケールすると、およそ60-70程度である。これは様々な研究で良く用いられる、ハロー質量とコンセントレーションの関係を表す、簡素なべき関数型のフィッティング関数とは矛盾し、後者は中心集中度を過剰評価する。(v)銀河系ハローにおける、ダークマター対消滅によるガンマ線フラックスを評価することは非常に重要である。しかし従来は最小スケール付近の小ハローに、銀河スケールのような大きいハローの構造を当てはめて、フラックスを評価していた。今回高分解能シミュレーションによって新たに明らかとなった高密度な構造から評価を行った場合、従来のものに比べフラックスは最大67%程度大きくなることがわかった。 これらの結果をまとめた論文がアストロフィジカルジャーナル誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、最小ハロー付近のハローの構造を明らかにし、次年度の研究への足がかりが得られたため。 また成果をまとめた論文が受理されたため。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度に行った、ダークマター対消滅フラックスの見積りには若干の不定性が残されている。銀河ハローの中でのサブハローの分布である。最小のスケールに近いハローほど、密度プロファイルのべきが急になるため、より大きいハローに比べ銀河系の中にサブハローとして生き残りやすいはずである。だがこれまでのシミュレーションではハローのサンプル数が不足しており、最小スケールに近いハローのサブハローとしての分布ははっきりとせず、より大きいハローの分布を外挿せざるを得なかった。 そこで今年度は新たに粒子数5500億、領域800pcのシミュレーションを実行し、ハローのサンプル数を増やし、最小スケールに近いハローのサブハローとしての分布を明らかにする。そして銀河系ハローのダークマター微細構造を定量化する。銀河サイズのハローの個性の違いを見るために、進化過程が異なる数十の銀河ハローについての分布を調べ、統計的精度を高める。そして銀河系内の対消滅ガンマ線マップを作成し、銀河系のどこがダークマター検出に適した場所であるかを明らかにする。これまでに得られた銀河系ハローの高分解能な3次元密度分布の地球の位置に観測者を置き、対消滅ガンマ線フラックスを定量的に見積もる。統計的誤差を減らすために、多くの銀河ハローについて調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初シミュレーションデータやその解析結果をバックアップするためのファイルサーバーを、100万円ほど使用して増強する予定であった。ところがハードディスクの価格が上昇したため、当該年度の増強を見送った。 ハードディスクの価格が下降する時期を見極めて、ファイルサーバーを増強する。
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