研究課題
若手研究(B)
今年度は計画通り、東京大学木曽観測所の1mシュミット望遠鏡と広視野カメラKWFC (Kiso Wide Field Camera)を用いて、高頻度の超新星サーベイを開始した。得られたデータを即時に解析し、突発天体を発見するシステムを整備し、安定して約100晩の観測を行った結果、1年間で30天体を超える超新星爆発候補天体を発見した。ほとんどの天体はデータが取得された晩のうちに発見されており、高頻度なサーベイの強みが生かされている。見つかった候補天体のうち7天体の分光観測に成功し、国際天文連合により超新星爆発と認定された。発見された超新星と候補天体の個数はおおよそ事前の予想通りであり、突発天体サーベイ観測を期待通りに遂行できることが実証された。一方で、分光同定することができた超新星爆発の割合が低く、分光フォローアップ観測体制をより拡充すべきという課題も明らかとなった。超新星爆発のメカニズムに関する研究では、これまでに得た近傍超新星爆発の偏光分光データを定量的に解釈すべく、偏光を含んだ3次元輻射輸送シミュレーションコードを開発した。このコードを用いて、様々な超新星放出物質内での元素分布を仮定し、偏光スペクトルのシミュレーションを行った。特に、元素分布が2次元軸対称の場合と3次元クランプ状の場合に大きな違いが見えることが明らかとなった。実際の偏光観測データは3次元的な構造を持っている場合に予想されるものに非常に近く、超新星爆発が3次元構造を持つことを示唆している。この結果をもとに、まずは観測データと数例のみのシミュレーション結果を掲載した論文を出版した。今後より詳細な比較を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、世界でも類を見ない1時間おきの反復観測による高頻度超新星サーベイを遂行することが研究の第一目的であった。1年間に約100晩の観測を行った結果、得られたデータを即時に解析し、突発天体を発見するシステムが安定的に動作することと、そのデータをチェックする人的体制が機能することが確認できた。そして期待通りの個数の超新星爆発候補天体を発見できたことは特筆すべきである。また、観測開始から半年間で、発見後の分光観測体制が不十分であることが浮き彫りになってきたため、年度途中から積極的に国内外の研究者と議論を重ね、その結果、約30名の研究者からなる分光フォローアップ体制を確立することができた。以上より、超新星サーベイ観測はおおむね順調に進んでいると判断している。超新星爆発のメカニズムに関する研究では、偏光を含んだ輻射輸送シミュレーションコードを計画通りに開発することができた。また、その結果を使った、超新星爆発の偏光分光観測データに関する論文も出版することができ、おおむね順調に研究が進んでいる。一方で、シミュレーションと観測データの詳細な比較はまだ完了しておらず、次年度に行うこととする。
超新星サーベイ観測は、今年度に確立したシステムを安定的に運用して、観測を続ける。特に、分光フォローアップ観測の成功率を上げる事を目標とし、超新星爆発の初期段階を捉える事を目指す。超新星爆発メカニズムに関する研究は、偏光を含んだ輻射輸送シミュレーションをより広いパラメータ空間に対して行い、観測との比較を行う。特に、一つのモデルが予想する偏光の波長依存性、頻度分布に注目して研究を行う。得られたシミュレーション結果と実際の観測を組み合わせることにより、超新星爆発内の元素分布を定量的に引き出す事を目標とする。本研究の最終目標の一つは、超新星爆発の流体力学シミュレーションと実際の観測を繋ぐことであり、この目標のために、超新星爆発放出物質内での3次元、時間依存、波長依存の輻射輸送シミュレーションコードの開発に着手する。まずは爆発メカニズムが比較的良く理解されているIa型超新星のモデルを用いて、超新星爆発の光度曲線とスペクトルを計算するところまでを次年度の目標とする。Ia型超新星でシミュレーションがうまくいくことを確認した後に、重力崩壊型超新星の流体力学シミュレーションに適用する。
該当なし
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 7件) 備考 (1件)
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