研究課題
平成25年度は平成24年度に引き続き、東京大学木曽観測所の1mシュミット望遠鏡と広視野カメラKWFC (Kiso Wide Field Camera)を用いて、高頻度の超新星サーベイを行った。また、平成26年度から本格的に行われる、すばる望遠鏡/ Hyper Suprime-Camを用いた突発天体観測に向けて、木曽観測所でのサーベイ用に開発した突発天体発見用のデータ解析パイプラインをHyper Suprime-Cam用に移植した。Suprime-Camの既存の観測データでテストを行い、一次処理から突発天体を発見するための差分処理、突発天体の発見までが一通り行えることを確認した。超新星爆発のメカニズムに関する研究では、超新星爆発放出物質内での3次元、時間依存、波長依存の輻射輸送シミュレーションコードの開発を行った。まずは、爆発メカニズムが比較的良く理解されているIa型超新星のモデルを用いて、超新星爆発の光度曲線とスペクトルが正しく計算できることを確認した。また、rプロセス元素を含む連星中性子星合体の放出物質にも対応出来るよう、鉄よりも重い元素データを組み込んだ。鉄より重い元素の束縛―束縛遷移データをすべて網羅した輻射輸送コードは世界にも類を見ない。この新しい数値コードの最初の実用例として、連星中性子星合体、ブラックホールと中性子星の合体における輻射輸送シミュレーションに成功し、光赤外放射の詳細な予測を提供した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成25年度は東京大学木曽観測所1mシュミット望遠鏡を用いた高頻度超新星サーベイを安定的に行うとともに、平成26 年度から本格的に指導するすばる望遠鏡/Hyper Suprime-Camによる突発天体観測に向けての準備を行った。具体的には、観測を行いながらリアルタイムに突発天体を発見するためのデータ解析パイプラインを移植し、既存のSuprime Camのデータでテストを行い、一次処理から突発天体を発見するための差分処理、突発天体の探査までが一通り行えることを確認した。理論的な研究では、超新星爆発のモデルからパラメータなしに実際の電磁波放射を予測できるようにするための、3次元、時間依存、波長依存の輻射輸送シミュレーションコードを開発した。まずはこのコードをIa型超新星の標準モデルに適用し、典型的なIa型超新星の光度曲線とスペクトルが得られることを確認した。また、連星中性子星合体からの電磁波放射も計算出来るように、鉄よりも重い元素のデータも組み込むことに成功した。最初の実用例として、連星中性子星合体からの電磁波放射の詳細な予想を提供し、論文を2編出版した。理論研究は予想以上に数値コード開発が進み、予定より早く科学成果をあげることが出来た。
平成26年度からすばる望遠鏡/Hyper Suprime-Camによるサーベイ観測が本格的に始まるため、まずはそのデータから超新星爆発を検出することを第一の目標とする。さらに、年度内にはリアルタイムにデータを処理するシステムを稼働させ、観測を行いながら即時に超新星候補天体を選び出し、分光同定観測を行うことを目指す。新しいカメラとデータ解析パイプラインによる超新星発見の効率を正しく理解し、1年目の観測データから、各タイプの超新星爆発の大まかな発生頻度を計算できるようにすることを最終目標とする。理論的研究では、平成25年度に完成させた輻射輸送シミュレーションの数値コードを超新星爆発の第一原理シミュレーションの結果に適用する。これにより、初めて重力崩壊の詳細なシミュレーションから電磁波放射までを途切れることなく一貫して追うことが可能となる。この結果を実際の観測と比較し、現在の超新星爆発モデルがどの程度観測されている超新星爆発の性質に近いのか、また性質が異なる場合は何が足りないのかを明らかにする。また、電磁波放射の性質と、ニュートリノ放射、重力波放射の性質の関係を調べ、マルチメッセンジャー観測から超新星爆発のどのような情報を引き出せるかを検討する。
次年度使用額が生じているが、平成26年3月28日に行われた研究会で講演するための旅費として既に使用しているため、平成26年度に使用するものではない。上記の理由により、平成26年度にこの差額を使用する計画はない。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 5件) 備考 (1件)
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http://4d2u.nao.ac.jp/t/var/download/index.php?id=NSMerger