研究課題/領域番号 |
24740118
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
QUIMBY Robert.M 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (10624140)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 |
研究概要 |
2012年度は、超高輝度超新星(superluminous supernova)の近傍宇宙での出現率の初めての測定結果を出版し、超高輝度超新星候補を撮像サーベイのデータから見つけ出す新しい方法の開発に着手した。超高輝度超新星の近傍宇宙(赤方偏移約0.2)での出現率測定には、数は少ないが、数え落としが無い超新星サーベイの結果を用いた。このためにまず、同じ超新星サーベイで得られたIa型超新星の出現率に関する論文を出版した。この論文は、超新星サーベイの効率を正確に知るために必要なモンテカルロシミュレーションが正しく行えている事を示すのに必要であった。この論文で、これまで報告されてきたIa型超新星の出現率にはバイアスがかかっており、実際の出現率よりも低い値を出してしまっている可能性がある事を示した。超高輝度超新星出現率の論文では、普通の超新星約1000個に対して超高輝度超新星が1個の割合で現れている事を発見し、超高輝度超新星が非常に珍しい超新星であることを示した。また、一部の超高輝度超新星の最大絶対等級のばらつきが小さいかもしれないことが分かって来た。もしこれが正しければ、宇宙の加速膨張の発見に使われた有名なIa型超新星で見える範囲よりもさらに遠くの宇宙を測定するのに使える距離指標として、一部の超高輝度超新星が使える可能性がある。 撮像サーベイのデータから超高輝度超新星を見つけ出す方法の改良では、パロマー・トランジェント・ファクトリーから6テラバイトの撮像データを収得した。新しいデータベースを作り、これらのデータを扱って処理するための多くのスクリプトを開発した。例えば、多くの画像を足し合わせてきれいな足し合わせ画像を作るためのスクリプトを、モンタージュのパッケージを元に作成した。2013年度は、これらのデータとスクリプトを用いて変光天体の新しい同定方法を調べて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請課題の重要な目標の1つを達成した。具体的には、近傍宇宙での超高輝度超新星の出現率を論文として出版した。また、超高輝度超新星候補を見つけ出す方法の改善に多く取り組んだ。変光天体を見つけ出すために、変動していない光を“shapelet modeling method”を用いて取り除くことをまだ取り入れていないが、2013年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Hyper Suprime-Camサーベイの開始がコミッショニングの遅れのために延期された。このため、当初の予定通りに2013年度中に高赤方偏移(赤方偏移2以上)の超高輝度超新星の出現率を測定する事が出来ない。代わりに、パロマー・トランジェント・ファクトリー(PTF)から超高輝度超新星の出現率を測定する事に集中する。PTFで測定可能な赤方偏移の範囲を画像を足し合わせる事により増やし、より遠方の超高輝度超新星を発見する。この方法によって、既に赤方偏移約0.7の超高輝度超新星(PTF13ajg)をPTFのデータから見つけ出す事に成功している。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度には、パロマー・トランジェント・ファクトリーから追加される画像を保存し、処理した画像(例えば、足し合わせ画像やシミュレーションされた画像)のための容量をより確保するため、ハードディスクを買い足す。また、最近得られた研究結果について議論するため、海外出張をする。特に、超高輝度超新星だと始め思われた天体が、実は重力レンズによって増光されたIa型超新星であった事を私は最近発見した。これは、強い重力レンズレンズ効果によって増光された標準光源の初めての例である。この天体について論文を書き終え、Astrophysical Journal誌の5月1日号で出版される事になっている。
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