研究課題/領域番号 |
24740119
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
BUNDY Kevin.A 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (20624141)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 |
研究概要 |
研究計画で述べた通り、複数の観測から統一された測光値を得る新しい方法を開発し、試験を行った。この方法は異なる望遠鏡の異なるバンド(波長領域)で観測されたデータをこれまでよりも遥かに高速に統合することができる。これにより、数百万の銀河の明るさを十分短期間に統一測定することが可能になった。この方法は本研究計画におけるBOSS銀河の星の質量の成長を調べる上で不可欠であると同時に、将来のHSCなどによるサーベイ観測にも有用である。異なるバンドの測光データを統合する際にまず問題となるのは天体画像に大気のゆらぎの影響を表す点像分布関数(Point Spread Function; PSF)がバンド間で異なることである。PSFが異なる場合、バンド間で同じ領域で測光しても銀河の異なる領域を測定してしまうことになる。この問題を解決する最良の方法はそれぞれの銀河を固有のモデルでフィットを行い、PSFに適合させることである。しかしながら、この方法を適用するのは簡単ではなく、全ての公開データで提供されている訳ではない。私が開発したSYNMAGSと言われる方法では、あるサーベイのあるバンドのフィット結果を用いて次のサーベイの観測バンドのPSFによって得られる測光値を予測する。またSYNMAGSでは固有モデルを6ないし8個のガウシアン関数に分解することで、非常に高速に動作させることに成功した。この方法を用いることで、スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)とUKIDSS近赤外広域サーベイのStripe82領域の230平方度の領域の観測データを組み合わせ、9バンドを統合した測光を遂行した。近赤外領域の測光値を得ることは信頼のおける星の質量の推定をするために不可欠である。このことは、大質量のBOSS銀河の広い観測領域中の星の質量分布関数を求めるために必要な準備がすべてそろったことを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の目標に向けて順調に進んでおり、予定通り2013年度末には計画を完了できると思われる。天体の測光方法については開発が終了し論文にも出版されている。この測光方法を使って、BOSS銀河の新しいカタログを使って銀河の星の質量を求めた。2013年度には最終的な星質量関数の計算(ほぼ終了)、誤差解析(開始した)、理論モデルとの比較(今後実行)を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる2013年度は,質量関数測定に及ぼす系統誤差のモデル化,及び観測された進化の理論モデルとの比較を行う。本分野のエキスパートであるCharlie Conroy教授を招へいし,恒星質量測定に関する講演会,及び恒星質量測定とその不確実性に関するワークショップも開催する。また,研究成果の発表及び国際天体物理学会でのプレゼンテーションも行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度には性能上の問題でコンピューターを購入できなかったため,2013年度に購入する予定である。さらに,恒星質量に関する小規模なワークショップを開催するほか,Charlie Conroy教授の招へい,ヨーロッパにおいて開催される会合への出席等に本研究費を充当する予定である。
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