研究課題/領域番号 |
24740121
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
谷津 陽一 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40447545)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超小型衛星 / ガンマ線天文学 / 硬X線偏光観測 / ガンマ線バースト / アバランシェフォトダイオード / マルチアノード光電子増倍管 |
研究概要 |
平成24年度の研究では、当初予定していた超小型衛星に搭載するためのガンマ線偏光観測装置、および広視野バーストモニタのフライトモデルの製造を行った。本年度の予算を用いて、新たに信号処理回路ボックスの設計・製造を行った。また、真空中での放電が確認されていたマルチアノード光電子増倍管のブリーダ回路を全面改修し、衛星に搭載できる品質を達成した。8月以降はこれらの部材を一つ一つ組立て、10月までにセンサユニットおよび処理回路のフライトモデルを完成させた。11月には宇宙科学研究所で並行して開発の進む衛星バスとの電気統合試験・物理的インターフェースを確認するフィットチェックを順次行い、完全に組み上げた状態での動作確認を行った。 本課題の申請当初は、平成24年末の出荷・打ち上げを予定していたが、ロケットを担当するドニエプル(ウクライナ)側の作業遅延により、フライトが大幅に延期された。現在も明確なフライトスケジュールは定まっていないものの、最短で平成25年度9月以降に出荷の可能性があり、この機会を活かして、より精密な地上較正実験を行うことにした。 特に重要な測定としては、フライトモデルを用いたKEK-PFのX線ビームを用いた偏光検出性能の検証実験が挙げられる。この実験では、完成したセンサユニットと信号処理回路のフルセットを持ち込み、電源のみ外部から供給して測定を行った。機器制御・データ収集もオンボードコンピュータを用いて行い、衛星内のコンポーネント間通信で用いるCANバスを経由して遠隔制御を行った。この結果、測定温度20℃という最悪条件にも関わらず、30keV~80keVにおいてシミュレーション通りの検出特性が実現できることを証明した。また、CAN経由での機器制御や大容量データ転送においても全く問題は見られず、約4日間の照射実験中、一度も停止すること無く連続して測定を行うことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のスコープである衛星搭載のためのガンマ線観測装置の開発自体は概ね順調に進んでおり、較正実験により設計目標を達成していることが確認できた。その一方で、ロケット側のトラブルにより、打ち上げスケジュールが約1年ほど遅れたため、現在は衛星全体のデバッグを可能な限り入念に行なっている最中である。バスシステム側では依然として小さな不具合が幾つか見られており、このチャンスを活かして開発チームの総力を挙げて改修作業を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
本衛星は9月のシッピングを目標に7月の最終組み上げを目指して急ピッチでデバッグ作業を実施している。我々の開発するガンマ線検出器部についてはそれまでに制御プログラムの確認や入念な温度較正試験を行い軌道上での観測に備える。一方、衛星バス側のトラブルについても私自身が陣頭指揮を取ってデバッグ作業に当たっている。これらも基板改修を含め7月の組み上げまでに全て不具合原因究明・修正を完了させる。7月以降は衛星に組み込んだ状態での最終環境試験(振動試験・熱真空試験・End to End試験)を実施し、本年9月のシッピングに向け準備を行う。現時点において打ち上げ予定は不明瞭であるが、シッピング後は手元のバックアップ機を用いてデバッグ作業を継続し、フライト直前まで機上プログラムの修正を行う。これと同時に地上解析環境を整え、打ち上げ後円滑に観測成果が得られるよう準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度末時点における未使用額は16,494円であり、次年度の衛星開発に必要な消耗品等の購入に充てる。
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