研究課題/領域番号 |
24740121
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
谷津 陽一 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40447545)
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キーワード | ガンマ線バースト / X線偏光計 / 超小型衛星 / APD |
研究概要 |
本年度はフライト用センサの最終組み上げを行った後、衛星バスに組み込みEnd to End試験を実施した。後半では制御ソフトを中心とした開発を行い、ガンマ線バースト発生時の自律的動作を確立するための制御アルゴリズム整備を行った。 偏光計部は単体の最後の環境試験として、過去に放電の見られたPMTブリーダの確認を念頭に、偏光計として組み上げた状態での真空試験動作試験を行い問題なく動作することを確認した。その後は、様々な温度で吸収体に用いる28chのAPDの光量測定を実施し、機上で走らせるための軽快なゲイン補償制御アルゴリズムを開発し、OBCに実装した。 バーストの発生を検知する広視野バーストモニタについても詳細な温度較正を行い、ゲイン補償制御アルゴリズムを実装している。また、突発天体を精度よくすぐさま検知するためにバースト判定アルゴリズムの研究開発を行った。フライトでは、取得された3つバンドのライトカーブに対して、125m秒毎に4種類つの時定数で微分演算を行い、バックグラウンドに対する変動有意度を判定する。このアルゴリズムもOBCへの移植が完了しており、較正線源を近づけるなどの操作で実際にバースト判定を出力することを実機で確認している。 これらセンサシステムは軌道上で基本的に自律して動作する必要があるため、トリガーからデータ取得ののち、衛星バスを介したデータダウンリンクまでを通して行うシーケンシャル制御プログラムを開発・実装した。このプログラムでは、実際に軌道上で使用することを念頭にSAA/極冠の放射線帯でのHVカットオフや温度・HV異常時のセンサシャットダウン等、対策も盛り込まれている。現在は衛星バスに搭載した状態で、Sバンドを介したEnd-to-End試験を実施し、これらの制御がスムーズに実行できることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の対象であるセンサ開発は順調であるが、衛星バスシステム開発のトラブル開発が若干遅れている。また、相乗りするメイン衛星の開発遅延とロケット側のスケジュール調整により、打ち上げ自体が課題の申請時より1年以上打ち上げが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年は、打ち上げに向けて制御ソフトウェアのデバッグに注力し、打ち上げの後の初期運用、較正観測の実施を目指す。 超小型衛星では衛星バスシステムを工学部の学生が設計・製作するため、これを信頼して開発を丸投げすることができない。昨年度はセンサを衛星バスに統合した後の各種干渉試験などを実施するにつれ、電源システム・通信システム・姿勢制御システム等で無数のトラブルが出ている。幸い、科学観測装置の開発がほぼ終わったこともあり、今後は衛星全体としての完成度を高め、確実にガンマ線偏光観測を実現できる様、バスシステム側の開発にも積極的に協力して進めていく。特に注力すべきは、ロケットから分離した後のデタンブリング、スピンアップ、太陽指向、パネル展開までの運用であり、これが3万秒以内に完了できるかどうかが衛星の生死を分ける。これから実施する各サブシステムの信頼性・試験手順書には理学観測器チームも細かく目を通し、協力して動作の検証を実施していく。 一方、理学観測器については、較正観測や偏光発生時の解析ツール開発を粛々と進める。較正観測にはSco-X1等明るいX線源が使用できる。これが地球の影から現れる瞬間の光度変化を使って広視野バーストモニタのトリガ動作を検証する。逆に、本番のGRB観測の際にはSco-X1等既知天体からのX線はバースト誤検知の原因となるため、地没から現れる時刻のトリガ生成を禁止する等対策が必要となる。これらソフト改修と、運用の方法を具体的に検討し、本番のミッション運用に備える。 偏光データの解析には、Geant4等によるシミュレーション環境・ジオメトリを予め構築しておき、様々な入射条件に対するレスポンスを生成出来るよう予め準備し、万が一GRBを検出できた場合にはすみやかに論文化出来るようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数が発生したため。 翌年度分の物品購入に充てる。
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