研究課題/領域番号 |
24740121
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
谷津 陽一 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40447545)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超小型衛星 / ガンマ線天文学 / 硬X線偏光観測 / ガンマ線バースト / アバランシェフォトダイオード / マルチアノード光電子増倍管 |
研究実績の概要 |
今年度前半では、軌道上での運用を想定したセンサ系制御ソフトウェアの洗いなおしを行い、較正測定を実施した。また、これと並行して衛星バスシステム側の動作確認作業を行い、衛星電源システムの最終性能確認を行い、軌道上での制御アルゴリズムを検討してソフトウェアを実装した。最終組み上げあと統合試験を行い射場へ向けて出荷した。出荷後は、東工大地上局の再構築、機能確認試験、コマンド管制システムの立ち上げを行い、現在軌道上にいる東工大衛星を用いて運用リハーサルを実施した。また、センサ系のコマンド運用に関しては、すざく衛星を参考に、コマンドの自動生成システム・チェックシステムを開発した。
TSUBAMEは11月6日打ち上げられ、分離1000秒後に太陽電池パネルを展開し、翌朝には太陽電池パネルを太陽方向に向けたスピン安定制御へ移行することに成功した。その後、1週間を掛けて衛星バスの各種機能確認を進め定常運用に移行したが、本格運用を前にして通信システムにトラブルが生じ、地上からのコマンド制御が困難な状態に陥った。その後は、CWによるHKデータの取得を行い、衛星バス動作状態を監視しつつ故障箇所の同定作業を進めた。現時点までに故障ポイントは2箇所にまで絞られており、再現実験にも成功している。
TSUBAMEは観測装置に電源が投入される前に通信が途絶してしまったが、衛星バスの基本機能は3ヶ月に亘るフライトにより実証された。特に、姿勢制御は東工大衛星としては初めての成功であり、この開発を通して姿勢制御システムの設計とシミュレーション環境の妥当性が実証された。また、軌道上での温度情報からは、ペイロードの温度がほぼシミュレーション通りの値になっていることが確認された。したがって、もし通信システムに問題が生じなかったならば、何らかの観測データを得られたと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
開発スケジュール自体はロケット打ち上げスケジュールの遅延以外概ね順調であった。実際、衛星搭載用のガンマ線センサシステムの構築、超小型衛星システムの開発、そして打ち上げは予定を約1年遅延して完了した。
しかしながら、軌道上における通信システムの不具合により、最終目標としていたガンマ線センサを用いた天体観測ができない状態に陥った。
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今後の研究の推進方策 |
装置開発・衛星システム開発という工学的な観点においては、限られた費用と人的資産の中で先進的な超小型衛星の開発を実際に行って運用するというきわめて重大な成果を得ることができたが、サイエンスデータを取得するという最終目標を達成するには至らなかった。
我々研究チームではこの技術的な知見を無駄にしないため、TSUBAMEの後継機を開発して再度GRBの硬X線偏光観測に挑むつもりである。もともと、本課題の最終年度は次世代センサのための新技術開発を予定しており、次期衛星搭載用の技術開発を継続して行うつもりである。具体的には光電子増倍管を次世代の光センサとして期待されているMPPCに置き換え、機械・温度的な耐久性・検出性能を格段に高める予定である。既に必要となる要素技術は26年度に開発・獲得できており、TSUBAMEに搭載した偏光計よりも高性能のセンサシステムを短期間に開発できると見込んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で開発したガンマ線観測装置はH26 年11月に打ち上げられたが、ウクライナ情勢による打ち上げ順延により、研究計画よりも大幅に遅れていた。当社は、本年度に完了する予定であった測定結果の取りまとめ、および次世代衛星へ向けた技術開発は計画を変更して27年度に行うこととしたため未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
ガンマ線観測装置のち乗降性実験の論文投稿、および次世代衛星へ向けた技術開発は次年度行うこととし、未使用額はこれに充てることとしたい。
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備考 |
打ち上げ後にプレスリリースを行い、本学の衛星については日刊工業新聞からの取材を受け、以下の様な記事がWebページに掲載されました。http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720141117eaaj.html
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