研究課題
若手研究(B)
「あかり」中間赤外線全天サーベイデータからdiffuseマップを作成する方法の開発が進んだ。本年度の成果は主に以下の4点である。それぞれ前例の無いユニークな解析であり、diffuseマップの精度・信頼性が向上することによってマップを使った新しいサイエンスが可能になっている。また、解析から得た装置設計に関する情報を、今後の赤外線天文衛星開発にもフィードバックしている。(1) 新しい黄道光分離方法の開発。銀河内空間からの放射を評価するには、「あかり」中間赤外線データから、太陽系内空間塵の熱放射である黄道光成分を分離しなければならない。過去のIRASやCOBEの全天マップでは、黄道光差し引き残渣としてあきらめていた成分についても、空間周波数で切り分け、残渣の少ないマップの作成に取り組んだ。概ね良好な結果が得られたが、黄道光と似た空間周波数をもつ銀河面成分の分離に苦労しているのと、分離後のマップの表面輝度の精度評価が今後の課題である。(2) 月の迷光の補正。月離隔数十度に渡って影響を及ぼす迷光成分の補正方法を確立し、これまで捨てていた多くの領域のデータが使用可能になった。また、この迷光の原因を設計とつき合わせて追求し、次世代赤外線望遠鏡SPICAの設計にもフィードバックしている。(3) 明るい天体の迷光の補正。明るい天体の周囲に現れる迷光の原理を推定し、補正する方法を確立した。(4) フラット補正の改善。「あかり」のように、散乱光の影響を多く受けている光学系では、一様な強度の空(スカイ)の観測によるフラットは精度が悪い。全天サーベイ中に、検出器中の異なる素子で複数回観測している星の観測結果を利用し、統計的に素子間感度ムラを求め、フラット補正の精度を数%上げることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
「あかり」中間赤外線全天diffuseマップの作成方法の確立については、順調に進んでおり、オリジナルのピクセルスケール(4.56”)では、人工的偽信号(artifacts)をノイズレベル以下に抑えることができている。解析の内容・解析により可能になったサイエンスについては、査読付き雑誌で報告している。ただし、本研究の最終目的の、銀河系内の物質循環の議論のためには、マップをスムージングしたり空間分解能を落としたりしてS/Nを上げ、数十度スケールに渡る広域の淡い放射成分も評価する必要があり、これには次年度に取り組む、さらに高度な解析が必要である。
次年度は、(1)「あかり」中間赤外線全天diffuseマップの作成に於いて、残っている課題(リニアリティ補正の改善、カメラ内散乱光補正、黄道光差し引きのさらなる改善)に取り組む。また、(2) マップをサイエンスに使うために汎用的に必要となる、表面輝度・積分強度・位置などの精度の系統的な評価方法を確立する。(3) 完成したマップを利用し、宇宙の物質循環について議論する。
研究は、3人の大学院生を指導しつつ行っている。次年度は、協力して統計解析を行うための計算機資源と、データを一時保存するための記憶領域、成果を手分けして国際会議や国内学会等で発表するための旅費、に割り当てる。
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すべて 雑誌論文 (25件) (うち査読あり 19件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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