研究課題/領域番号 |
24740125
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
政田 洋平 神戸大学, その他の研究科, 助教 (30590608)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 太陽 / ダイナモ / 乱流 |
研究概要 |
本研究の目的は、太陽タコクライン層内乱流の起源を解明し、太陽ダイナモ過程を物理無矛盾に理解するための基礎を構築することである。 平成24年度は、申請者が開発した局所計算モデルで太陽内部の対流層+安定層構造を模擬し、磁気流体不安定性の非線形発展とその緯度依存性を詳しく調べた。その結果、事前の予想に反し、非線形段階ではあらゆる緯度・深さで磁気回転不安定性よりも磁気対流の成長が卓越することがわかった。一方、貫入性対流によるダイナモの結果、対流層と対流安定層の境界付近に、周期的な振動をともなうコヒーレントかつ大局的な磁場が生成されることを明らかにした。今年度最大の成果は、この大局的磁場の生成・反転機構が、α^2ダイナモとそのダイナモ波で説明できることを、シンプルな平均場理論を使って明確に示したことである(Masada & Sano 2013 in prep.)。既存の理論では、太陽黒点を説明するような大局的磁場の起源はα-Ω型のダイナモであると考えられてきた。現実の太陽内部においてα^2ダイナモが発現する可能性を今後詳しく検証することで、従来の太陽ダイナモ理論が大きく書き換えられる可能性がある。 局所対流ダイナモ計算と並行して、Yin-Yang格子を使った高解像度回転球殻太陽ダイナモシミュレーションも行った。その結果、貫入性磁気対流の角運動量輸送によって太陽型の回転プロファイルおよびタコクライン層が自発的に形成されることを明らかにした。また、自発的に形成されたタコクライン層内で、周期反転をともなう双極型磁場が成長することもわかった(Masada, Yamada & Kageyama 2013 submitted to ApJL)。局所計算と大局的計算を組み合わせたダイナモ研究を今後更に進めることで、太陽の磁場生成・維持機構に対する理解が大きく進展することが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、対流安定なタコクライン層内の乱流の起源を解明し、太陽活動の長期予報を実現するための物理基盤を構築することである。初年度は、すでに開発済みの局所シミュレーションモデルの有用性の検証と実問題への応用を進めた。 まず、太陽よりも回転の影響が強い大質量星の進化晩期「超新星コア」に局所モデルを適用し磁気回転不安定性の成長を調べることで、計算モデルの有用性を検証した。本研究の結果、局所計算モデルの威力を実証するとともに、磁気回転不安定性駆動型非線形乱流のマクスウェル応力が、星の内部の差動回転の度合いに強く依存することを明らかにした(Masada, Takiwaki, Kotake & Sano 2012)。 また、研究実績の概要でも述べた通り、タコクライン層内乱流の起源についても、局所モデルと回転球殻モデルを組み合わせた研究により、当初の期待よりも面白く重要な成果が得られつつある状況である。 査読付き論文という目に見える形での成果は、平成24年度は上記の1本のみである。しかし、回転球殻ダイナモ計算に関する論文を現在投稿中である(Masada,Yamada & Kageyama 2013 [http://adsabs.harvard.edu/abs/2013arXiv1304.1252M])。さらに、局所ダイナモ計算の結果をまとまた論文も現在執筆中である(Masada & Sano 2013 in prep.)。太陽活動の長期予報を実現するための物理基盤を構築するという本研究の目的達成に向けて、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画では平成25年度以降は「長時間シミュレーションによる乱流とダイナモ過程の非線形相互作用の解明」を行うことになっている。当初の計画通り今後の研究を推進する。特に、現実的な太陽モデルで、高解像度・超長時間積分の太陽ダイナモシミュレーションを行うためには、低マッハ数近似MHD方程式を用いた計算コードの開発が不可欠である。平成24年度に行った研究の物理定量化を進めるとともに、新しい計算コードの開発を進めることで、最終年度の総仕上げの研究に向けての基盤を整える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額1万3200円と2013年度分90万円を合わせた今年度の研究費は91万3200円である。 研究費の使用計画は以下の通りである。 国際会議参加費(20万円)、国内会議参加費(20万円)、論文出版費(20万円)、ソフトウェア購入費(10万円)、パソコン関連消耗品費(15万円)、消耗品費(6万3200円)
|