研究課題/領域番号 |
24740125
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
政田 洋平 神戸大学, その他の研究科, 助教 (30590608)
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キーワード | 太陽 / 磁気流体力学 / 対流 / ダイナモ |
研究概要 |
平成25年度は太陽タコクライン層のダイナモ機構への影響を調べるために、2つの計算モデル(『回転球殻モデル』と『局所モデル』)を使って大規模シミュレーション研究を進めた。太陽ダイナモ機構を理解するためには、太陽内部の複雑な非線形磁気対流現象を高解像度で分解し、かつ積分回数がO(10)万回にも及ぶ超長時間積分シミュレーションを行う必要がある。Masada et al. (2013, ApJ) では超高解像度・超長時間積分太陽対流計算を実現するために、『インヤン格子』と呼ばれる革新的格子を使った回転球殻太陽計算モデルを世界で初めて開発した。高精度化にともない極周辺に格子が集中し計算の時間刻み幅が極端に小さくなる従来法(緯度-経度格子法)の問題点を、インヤン格子を導入することで解消し、 高精度・超長時間積分太陽対流シミュレーションを実現した。その結果、①太陽型のタコクライン層が自発的に形成されること、②『タコクライン層』内に赤道反対称な大局的磁場が形成されること、③形成された大局的磁場が準周期的反転を示すこと、を明らかにした。回転球殻シミュレーションで実現したダイナモの物理をより詳細に理解するために、相補的な局所対流ダイナモシミュレーションも行った。局所シミュレーションのモデルは、当該課題の研究計画で提案したモデルである。このモデルを用い、Masada & Sano (2014, PASJ accepted) では、非常に乱れた対流の中での大局的磁場の自己組織化を世界で初めて局所計算で実現することに成功した。これらの結果は、回転対流そのものに起因して生じる統計的なダイナモ効果である「α効果」が、太陽ダイナモ機構にとって重要な役割を果たしていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「太陽タコクライン層」を物理定量的に調べることで、標準太陽ダイナモモデルの未解決問題を解消し、その理論を着実に増強することが本研究の当初の目的であった。しかしながら、当該課題の研究を進めるにつれ、標準モデルでは重要視されていない幾つかの効果が実はダイナモ機構にとって本質的であることが明らかになりつつある。特にMasada & Sano (2014) でその重要性を見いだした、回転対流の対称性の破れによってもたらされる統計的なダイナモ効果 =『α効果』は、太陽の枠組みではこれまでほとんど研究されておらず当初の計画でも全く予期していなかった成果である。これは大規模・長時間積分の非線形磁気流体シミュレーションによって初めて可能になった研究であり、今後さらにこの『α効果』によるダイナモ機構の研究を系統的に進めることで、当初の計画以上に太陽ダイナモの本質に迫る成果が得られることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究で見いだした『α効果』によるダイナモ機構を定量的かつ系統的に調べることが、平成26年度の研究計画である。まず、局所シミュレーションの平均場モデリングでα効果によるダイナモの存在を定量的に立証する。また幅広いパラメータサーベイを実施し、α効果ダイナモの極性反転周期の物理パラメータ依存性を調べることで、磁場反転を特徴付ける物理を特定する。さらに、回転球殻モデルと局所モデルの両方を用いて、太陽内部により近い物理パラメータで対流のα効果とダイナモを詳しく調べる。研究を遂行する上での課題は、太陽内部に特有な低マッハ数流れの数値的取り扱いである。特に太陽対流層下部を数値的に調べるためにはマッハ数が0.0001のオーダーの流れを扱う必要がある。今年度は、音速を近似的に落とす方法や人工的に抑制する方法は採用せず、比較的マッハ数の大きな太陽対流層上部に狙いを絞り、ダイナモシミュレーションを実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文掲載料が予定よりも安かったため。 平成26年度の論文掲載料として使用する。
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