平成25年度は、まずサブミリ波望遠鏡ASTEを用いた渦巻銀河NGC628に対する12CO(3-2)輝線のマップ取得とデータ解析を行った。さらに、これまでにASTEやJCMTなどのサブミリ波望遠鏡で獲得された様々な銀河の12CO(3-2)輝線マップ、およびSPITZER望遠鏡で獲得された波長24ミクロンのデータと合わせ、12CO(3-2)輝線光度と24ミクロン光度の比較を行った。その結果、両光度の間に非常に強い相関が得られ、さらに渦巻銀河と棒渦巻銀河ではその勾配が異なっていることを明らかにした。即ち、棒渦巻銀河だけで12CO(3-2)輝線光度と24ミクロン光度の相関を得ると、その勾配はほぼ1であったが、渦巻銀河だけで両者の相関を得ると、その勾配は0.8程度と小さくなることを発見した。これは、12CO(3-2)でトレースされる高密度分子ガスの量と実際に形成される大質量星が棒渦巻銀河では1対1で対応するものの、渦巻銀河では形成される大質量星が少ないことを示唆する。 一方で、銀河の構造が星形成則に与える影響をより詳しく明らかにするため、アーカイブの12CO(1-0)、12CO(2-1)データを使い、円盤銀河における分子ガスの中心集中度を調べた。これまで、棒渦巻銀河はその棒状構造により、(棒状構造を持たない)渦巻銀河に比べて効率よく分子ガスを銀河中心部に輸送できる(即ちガス中心集中度が高い)とされてきたが、本研究で渦巻銀河でも分子ガス中心集中度が高いことを発見した。これは、棒渦巻銀河と同様に効率良くガス輸送が起きていることを示唆する。 これらの結果より、分子ガスの中心集中や高密度ガス形成までは棒渦巻銀河と渦巻銀河の間に違いは見られなったが、最終的な星形成発現では定量的な違いが見られるという新たな知見を得た。今後、どのような物理機構がその違いを生むのかをより詳しく明らかにしていく。
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