研究課題
本研究は、約40年の謎であるブラックホール特有のX線変動の起源を、宇宙X線衛星を用いた観測により解明することである。ブラックホールが示すX線変動のタイムスケールは、数秒以下でひじょうに早いため、ブラックホール近傍の降着現象が何らか影響していると考えられているが、降着ガスの形状や密度などの基本情報すら分かっていない。最終年度となる本年は、X線衛星「すざく」衛星が観測したブラックホール連星に関する三編の主著論文が受理されるに至った。(1) ブラックホール降着流から高階電離した鉄輝線が現れて消える現象の発見、(2)光度が低い時期(ハード状態)の広帯域スペクトルが、ハードとソフトなコンプトン、降着円盤からの放射、反射成分に分解できることを特定にモデルに依存せずに分解し、「約100万度(~0.1 keV)の低温円盤と、約10億度(~100 keV)の高温コロナがブラックホール周囲に共存し、質量降着率によってそれらの重なり具合が変化する」ことを示す (3) 1 秒以下のスペクトル変動をショット解析 (根来他1995年) を用いて抽出し、集積したフレア(ショット)を0.1秒ごとに時間分割し、10-200keVまでのスペクトルを得る事にはじめて成功、の3つである。これにより、牧島他(2008)では電子温度、光学的厚みのどちらが増光時に変化しているかが分からなかったが、明るくなるにつれて、電子温度が下がり、光学的厚みが上がり、明るさのピークに達した瞬間に電子温度が急激に上がることがわかった。将来の発展に向けて、X線衛星ASTRO-H衛星に搭載される精密X線分光装置の検出器の開発や試験、次世代の超精密分光ブラックホール鉄輝線観測衛星に向けて超伝導遷移端X線検出器の開発も行った。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
The Astrophysical Journal Letters
巻: Volume 767, Issue 2 ページ: L34, 5
10.1088/2041-8205/767/2/L34
巻: Volume 767, Issue 2 ページ: L35, 6
10.1088/2041-8205/767/L35
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 65 ページ: 80
10.1093/pasj/65.4.80
http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130404_2/