太陽コロナにおけるフレアのような急激なプラズマ加熱の際の、電離過程について研究をおこなった。太陽フレアでは急激な加熱が起こり、ダイナミカルなタイムスケールより加熱のタイムスケールの方が速い。そのため、電離過程が平衡に至らない事をこれまで示したきた。またフレアの際、プラズマが急激 に加熱された事により生じた熱勾配によって、熱伝導が生じ彩層にエネルギーが伝わり彩層蒸発という現象を起こす。この彩層蒸発流は彩層起源のプラズマなので密度が高く、一般的には電離平衡になると信じられてきたが、開発した電離過程と流体力学過程を同時に解く計算コードを用い て、彩層蒸発について数値シミュレーションをおこなった結果、ごくごく初期のフェーズでは電離非平衡になる事がわかった。さらに観測で示されているような200万度程度での50km/sec 程度の下降流を再現するためには、従来用いられている熱伝導係数に関しても修正が必要である事もわかった。これまで太陽物理学では常に電離平衡が成り立っているという過程のもとに議論が進められてきたが、太陽フレアのような非常にダイナミックな現象に関してはその仮定は成り立たず、電離過程と電磁流体力学の両者を合わせて考察する事が必須である事が、本研究によって示された。また、本研究のために開発した電離非平衡・電磁流体計算コードは、熱的非平衡プラズマという新しい太陽物理学の方向性を切り開いたものであり、さらなる発展が期待できる。
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