研究課題
平成25年度は、3次元磁気流体(MHD)シミュレーションによる3次元太陽フレア噴出とそれに伴う非定常磁気リコネクションのシミュレーション結果の解析を行った。そして、その解析結果を科学論文にまとめて出版した。また3次元磁気流体シミュレーション結果中にテスト粒子を注入し、その振る舞いを調べた。そしてその結果と太陽電波観測による粒子観測との比較を行い、論文投稿の準備をしている。太陽フレア3次元シミュレーションでは、磁束管噴出(コロナ質量放出)に伴うグローバルなエネルギー解放と、同時にその下に形成される電流シートが不安定性で分裂することによって非定常なエネルギー解放を誘導し、ミクロな粒子加速が起きることを明らかにした。グローバルな磁束管噴出は、初期の捻じれが強いほど3次元的な磁気力を受けて加速され、その結果、速いエネルギー解放と大きな電場増幅を引き起こす。一方で電流シートの細分化による小規模な磁束管噴出は、電流シートを乱流的にし、より短時間より局所的な電場増幅を引き起こした。各電場増幅は磁束管噴出と同期しており、磁束管の大きさに応じて電場増幅の時間スケールも決まることがわかった。これらは粒子加速過程の理解にとっても重要である。さらにテスト粒子を入れた結果、乱流的な3次元電流シート内で間欠的に様々な高さで粒子が加速されるのを示した。これらの結果は、太陽電波バーストとして観測される加速電子の振る舞いと非常によく似ている。チェコのオンドレヨフ電波観測所にて観測された電波スペクトルを用いて、統計的に加速電子の振る舞いを解析し、得られたテスト粒子の振る舞いとの比較を行った。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は主に、①3次元太陽フレアの数値(磁気流体)シミュレーション、②テスト粒子計算を用いた粒子の加速過程解析、③得られた数値シミュレーション結果と太陽観測との比較、の3つである。平成24-25年度で計画していた①の太陽フレア噴出のモデリングはほぼ完了し、論文出版と国内外の学会での成果発表を行っている。現在②と③に取り組んでいるところであり、ほぼ順調に進んでいると言える。②ではラーマー半径の大きな陽子についてテスト粒子シミュレーションを行った。一方で電子のテスト粒子シミュレーションは未実施であり、長期変動の計算もまだ未達成の平成26年度の課題として残っている。③では、チェコのオンドレヨフ電波観測所で撮られた太陽電波バーストと加速粒子シミュレーションの比較を行っている。現在論文投稿準備中である。また、昨年は「ひので」衛星観測運用に参加し、フレア観測プログラムを作成・実施してフレア観測に成功することができた。これらと数値シミュレーションとの比較を今後行う。
平成26年度の課題として、①3次元太陽フレア数値シミュレーション中でのテスト粒子計算と、②太陽観測との比較が残っている。①は平成25年度に陽子をテスト粒子として扱った計算を行ったが、それを電子に関しても行い、加速陽子と加速電子の振る舞いの違いについて明らかにする。またその際には、注入粒子の条件を変えながら、加速機構の場所とスペクトルの時間変動を解析する。さらに長時間磁気ループに捕捉された粒子についても調べ、局所的短時間における加速過程との関連性を明らかにする。最終的にはこれらを論文にまとめ、学会発表を行う。②では現在進行中の太陽電波観測にて調べられる加速電子の振る舞い、また「ひので」による太陽フレア分光観測との比較を行い、類似点と相違点、数値シミュレーションへのフィードバックについて考察する。これらも論文にまとめ、学会発表する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 5件)
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