研究課題/領域番号 |
24740138
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鵜養 美冬 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30420053)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ガンマ線分光実験 / ハイパー核 |
研究概要 |
当該研究は、J-PARCハドロン実験施設K中間子ビームライン(K1.8/K1.1)において、ハイパー核ガンマ線分光用の生成反応として、(K-,π0)反応をタグするためのパイゼロスペクトロメータ開発を目的としている。 パイゼロからの崩壊ガンマ線エネルギー測定用の鉛ガラスの粒子弁別の性能を評価する目的で、6月にJ-PARC K1.1BR ビームラインにおいて、0.8 GeV/c、1.0 GeV/cの電子とパイオンを照射するテスト実験を行なった。検出器に対する入射位置、角度により電子とパイオンの弁別能力に差が見られたため、最適化した配置の検討を行う必要があることが確かめられた。 8月に国際会議で当該研究に関わる内容の口頭発表を行い、国内外の研究者と議論し、様々な知見を得ることができた。 また、J-PARC K1.8 ビームラインにおいて(K-,π-) 反応を用いた4ΛHeのハイパー核ガンマ線分光実験の準備を行なった(J-PARC E13)。この実験は、当該研究で目的とする(K-,π0)反応によるハイパー核ガンマ線分光実験の荷電対称反応であるため、実験データを詳細に解析することで、(K-,π0)反応で生成されるハイパー核状態の反応断面積や、ガンマ線スペクトル上のバックグランド量を推定することができる。1月よりK1.8における前実験のスペクトロメータセットアップを全面的に変更し、(K-,π-)反応用に特化したスペクトロメータ(SksMinus)をセットアップした。3月には、SksMinusのコミッショニング用ビームタイムで性能評価を行い、動作を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉛ガラス検出器の性能を実際のビームを用いて評価することができた。当初、東北大学電子光理学研究施設(ELPH)のテストビームラインにおいて、1 GeV 付近のガンマ線ビームを用いて、テスト実験を行う予定であったが、震災の影響によりシャットダウンが続いていたため、ELPHにおけるテスト実験は行うことができなかったが、J-PARC ハドロン実験施設K1.1BR ビームラインにおいて、1.0 GeV/c, 0.8 GeV/c の電子、パイオン両方のビームを用いて同時に、両ビーム粒子に対する性能評価を行うことができた。 荷電対称反応である(K-,π-)反応を研究することは、当該研究においても重要であるため、J-PARC K1.8ビームラインにおける(K-,π-)反応用のスペクトロメータセットアップを行なった。3月に行なったコミッショニング用のビームタイムにおいて、スペクトロメータシステムの性能が十分であることを確かめた。
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今後の研究の推進方策 |
(K-,π-)反応による4ΛHe ガンマ線分光実験(J-PARC E13)が平成25年5, 6月に行われる。この実験データを解析することにより、荷電対称である(K-,π0)反応の情報を得ることができる。特に、バックグラウンドの現実的な見積が可能となるため、非常に重要である。 また、E13では、He標的前方にビームK- 崩壊事象(K-→π-π0)を除去するための鉛とプラスチックシンチレータを組み合わせた電磁シャワーカウンター(SP0)が設置されている。SP0の大きさは、(K-,π0)反応用のパイゼロスペクトロメータと同じようなアクセプタンスを持ち、同じ電磁シャワーカウンターであることから、当該実験のテスト実験としての役割を果たす。E13実験にパラサイトする形で、テスト実験を行う予定である。 E13実験終了後に、得られたデータを精査し検出器のデザインを行う。また、最初の(K-,π0)実験として、4ΛH のガンマ線分光実験を計画し、現実的な収量、センシティビティーの見積りを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、既存の検出器、設備を一部活用したために生じた。 平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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