研究課題/領域番号 |
24740139
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 正俊 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教 (30400435)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Hoyle状態 / ガス的αクラスター状態 / αクラスター凝縮 |
研究概要 |
今年度における主な研究実績は以下の通りである。 (1) 東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(以下、東北大CYRIC)における110MeV-12Cビーム(核子あたり9.2MeV)を用いた12C(12C,12C*[3α])12C反応からの崩壊α粒子測定のテスト実験 (2) X(12C,12C*([3α])X 反応における崩壊α粒子測定実験のモンテカルロシミュレーションプログラムの開発 (3) 大阪大学核物理研究センター(以下、阪大RCNP)における12C(α,α')12C*[α+X]反応実験によるαクラスターガス状態の研究成果に対してクラスター国際会議(ハンガリー、デブレッチェン)での招待講。および 阪大RCNPにおける12C(α,α')および16O(α,α')反応実験によるαクラスターガス状態の研究成果に対するCOMEX4国際会議(日本、神奈川県葉山町)での招待講演 (1)は、本研究の目的である12Cの第二0+状態の構造の実験的決定に向けた東北大CYRICにおける実験のテスト実験である。このテスト実験において、崩壊α粒子検出装置を開発し、12C(12C,12C*[3α])12C反応における検出器の最適な配置構成を決定した。(2)においては 12C* → 8Be+α → 3α の逐次的な崩壊チャンネルについての放出角度、運動量、のパターンが得られ、検出器の角度およびエネルギー分解能が非常に良いという条件はつくが、実験結果から逐次成分を取り除くことが可能となった。(3)においては、12Cには第二0+状態のようなα粒子がボーズ・アインシュタイン凝縮のように同じクラスター軌道に存在しているようなαクラスターガス状態だけでなく、さらに希薄で広がったαクラスターガス状態やαクラスターが3つ直線的に並んでいるような状態を示唆する実験結果について発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた(a)崩壊α粒子検出装置の開発、(b)崩壊α粒子測定のモンテカルロシミュレーションプログラムの開発、については完了しており、予定通りに進んでいる。 (a)の崩壊α粒子検出装置に用いるシリコンストリップ検出器は、研究費をプリアンプ等の回路を購入にあてたため、過去の研究で使用した検出器を流用し、その検出器に最適化した崩壊α粒子検出装置を作成、かつ最適なビームエネルギーを用いてテスト実験を行った。(b)の崩壊α粒子測定のモンテカルロシミュレーションプログラムについても研究実績の概要で述べた通り、逐次崩壊チャンネルの崩壊α粒子の放出角度・運動量分布が求められており、実験結果から逐次崩壊成分を取り除くことが可能となっている。 また、東北大CYRICにおける崩壊α粒子測定のテスト実験も行っており、本測定を平成25年6月後半に予定している。さらに阪大RCNPでの大口径スペクトロメータ(LAS)を用いた崩壊α粒子測定のテスト実験を5月に予定しているおり、ほぼ計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
達成度の欄で述べたように、平成25年5月に阪大RCNPにおいてLASを用いた多重崩壊α粒子測定のテスト実験を予定している。ビームエネルギーに比べ、相対エネルギーが小さい崩壊α粒子を可能な限り一つ一つ分離して測定できるように、イベント発生のトリガー信号を生成するプラスチックシンチレータを通常11分割されているものから崩壊α粒子が飛来する高運動量領域をさらに細かく分割したものへと改良を行っている。さらに焦点面の直前でビームを止めるファラデーカップを製作し、LASを用いて逆運動学反応によって多重崩壊α粒子を測定できるかをテストする。このテスト実験では、甲南大学、秋宗英俊教授が推進している36Arにおけるαクラスターガス状態の探索実験と崩壊α粒子測定方法と同じであるため、共同して測定技術開発を行うことで研究を推進する。具体的に問題点を洗い出し対策を行った後、平成25年度後半に4He(12C,12C*[3α])4He反応における多重崩壊α粒子測定実験を行う予定である。 次に東北大CYRICでは、平成25年6月末に重心系で約15度における測定実験を行う。この角度は、テスト実験において12Cの第二0+状態がバックグランドフリーで測定できることがわかっている角度で、現在世界一とされるデータに匹敵する統計量の崩壊α粒子測定を行う。さらに、平成25年度後半に12Cの第二0+状態の散乱断面積がより大きい0度における測定にチャレンジする。 なお平成25年4月から本研究を修士論文の課題とする大学院生が加入したことにより、研究の推進力はより大きくなっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、以下のような使途に用いる。 1. 東北大CYRICでの実験に向けて反跳粒子検出装置の開発および崩壊α粒子測定装置の改良。当初の計画では、反跳粒子検出器には常温のシリコン検出器を用いる予定であったが、エネルギー分解能、および飛行時間測定による粒子識別能力をさらに向上させるため、ペルチェ素子を用いて冷却システムを構築し、シリコン検出器を冷却して用いる。また、0度測定に向けて崩壊α粒子測定装置の改良も行う。崩壊α粒子測定側のシリコンストリップ検出器も冷却することによって、レート耐性、エネルギー・時間分解能の向上させる。 2. 阪大RCNPの実験に用いるHeガス標的の製作およびトリガーシンチレータ・ファラデーカップの改良。4He(12C,12C[3α])4He実験に最適化するため、入射窓により薄い膜を用い、崩壊α粒子および反跳4He原子核(=α粒子)を測定できるようにしたHeガス標的を作成する。Heガスの循環装置等は既存のものを利用する予定である。また、平成25年5月のテスト実験において洗い出された問題点の対策(今のところ考えているのは配置・形状の最適化)をトリガーシンチレータおよびファラデーカップに対して行うことを考えている。 3. 日本物理学会および研究会、RCNPへの研究打ち合せ等の旅費。
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