本研究の目的は、α凝縮状態と考えられている12C第二0+状態の構造を実験的に決定することである。 最終年度である本年度は、次の3項目の実験研究を実施した。(1)東北大学CYRICにおいて、有限角度における12Cの第二0+状態からの崩壊3α粒子の精密測定の本実験。(2)大阪大学RCNPにおいて、大口径スペクトロメータによる36Arビームを用いた0°多重崩壊α粒子測定のテスト実験。(3)東北大学CYRICにおいて、0°における12C第二0+状態からの崩壊3α粒子測定実験。またCYRIC実験において、崩壊α粒子測定装置を安定に高分解能を維持するためのペルチェ素子を用いた冷却機構の導入や、実験データから様々な崩壊様式を分離するために用いるモンテカルロシミュレーションに、より現実的なエネルギー損失の分布、クーロン多重散乱による角度の広がり、検出器の分解能によるエネルギーの広がり等を導入し、改良を行った。 実施した上記3つの実験のうち、(1)の実験が本研究に最も適していることが判明し、より高統計のデータを得るため(1)を重点的に行った。結果、精密に測定した崩壊3α粒子の運動量分布から、モンテカルロシミュレーションとの比較により、12C*→8Be+αの逐次崩壊成分と12C*→3αの直接3αに崩壊する成分とを分離することに成功した。また、直接3αに崩壊する成分も、エネルギーの揃った3つのα粒子を放出する崩壊(DDE)と位相空間に均一に崩壊する成分に分けることができた。α凝縮状態は、3つのα粒子が全て同一0S軌道上に存在するため、崩壊時に3つのα粒子が全て同一の運動エネルギー、つまり上記DDEのように崩壊すると考えることができる。厳密な三体崩壊の理論計算と比較する必要があるが、DDEの存在は12C第二0+状態がα凝縮であることを実験的に示していると考えられる。
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