研究課題
若手研究(B)
初年度は、各電極幅0.15mm、ピッチ0.3mmの同心円環電極、引出し穴0.8mm^2を持つRFカーペットを用いて、"イオンサーフィング"法と呼ばれるガスセル中での新しいイオンの輸送方式をテストした。結果、カリウムイオンに対してほぼ100%の輸送、引出し効率が得られた。これにより、先行研究で行われた直線平行電極による輸送と同様、円環電極でもほぼ100%の輸送効率が得られる事を実証した。これを踏まえ、実際の実験で用いる予定の各電極幅80um、ピッチ160umの同心円環電極、引出し穴0.15mm^2の新しいRFカーペットを作成した。設計に当たって行ったシミュレーションでは効率の減少は見られなかった。引出し穴をより小さくできた事で、ガスセルから引出した後の作動排気系の大幅な簡略化が期待される。一方で、さらに細かいピッチ故にほぼ1nFの静電容量を持つため、4MHz以上の高い周波数でのsin波よる駆動は容易ではない事が予想される。そのためsin波の代わりに矩形波を用いた駆動を考えている。矩形波駆動のための電気回路系を作成し、安定に動作する事も確認した。
2: おおむね順調に進展している
上述した実績に関して、当初の計画通り順調に進展していると判断する。"イオンサーフィング"法は共同研究者によってすでに実証されているが、それは直線平行電極によるもので引出しも行われていなかった。より実践的には小さい引出し穴からのイオンの引出しは不可欠であり、本研究でそれが100%近い効率で実証できたことは大きな意義がある。次年度用いる新しいRFカーペットの設計も完了しておりすでに発注済みであるため、それらを用いた実験が次年度の早い段階から行える準備は既に整っていると言える。総じて、次年度は当初の予定通り実践的なセットアップで、不安定核によるテストが行えることが十分期待できるため。
今後は、矩形波で駆動した"イオンサーフィング"法を新しいRFカーペットに適用し、テストを行う予定である。そのための新しい真空チェンバー、および周辺機器も平行して作成を行い、実際に排気系の簡略化の評価を行う。同様の矩形波回路を用いて、RFカーペットから引出した後の高真空領域でへのイオンの輸送もテストする予定である。これまでのテストに用いたカリウムイオンの他に、より重い質量のバリウムイオンでのテストも行い、その質量依存性もテストする。これら安定核を用いたテストを経た後、核分裂生成物に含まれる高エネルギーの不安定核を用いて、ガスセル中での停止及び輸送をもテストする。これにより実際の加速器を用いた実験により近い条件での評価が可能になる。
該当なし
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
An rf-carpet electrospray ion source to provide isobaric mass calibrants for trans-uranium elements
巻: 337 ページ: 24-28
10.1016/j.ijms.2012.12.009
Fourth Report on Progress of the Portable Multi-Reflection Time-of-Flight Mass Spectrograph for SlowRI - First separation of (molecular) isobars
巻: 45 ページ: 147