平成26年度の成果は、平成24、25年度の1+1+1フレーバーQCD+QEDの物理点での数値計算の実現で懸案事項となっていた有限体積効果の評価に取り組んだ。 先ずは、より大きな体積で2+1フレーバーQCDの物理点の探索を行い、クォーク質量の決定、擬スカラー粒子の崩壊定数の決定を行った。また、安定粒子の質量スペクトルが実験値を再現していることを確認した。さらに、物理点探索の副産物として、物理点近傍のクォーク質量の異なるデータが得られたので、それらを使いQCDの低エネルギー有効理論に含まれる定数達の決定も行い、現象論と他グループと無矛盾な結果を得た。よって、信頼出来る大きな体積のQCDのゲージ配位を生成したことになる。これは、大きな体積を必要とするQCDから直接原子核を構成する研究や核力の性質を研究するための土台となる非常に重要な成果である。 一方、アイソスピンの破れの効果を取り入れたQCD+QEDの実現と陽荷電半径の計算に関して、大きな体積でのテスト計算の結果、我々の開発してきた手法では、さらなる改良が必要であることが分かった。原理的に問題はないのであるが、体積を大きくしていくにつれて適用できる条件がより制限されていくためである。それを受けて、アルゴリズムの改善等のテスト研究を行い、次のステージに向けての準備を開始した。 本研究の主目的は、物理点で1+1+1フレーバーQCD+QEDの数値計算を実行することであった。我々は世界で初めてこれを実現し、アイソスピンの破れの効果を確認した。その後の他グループの研究が、QED効果を取り入れていることを見ると、本研究の意義は大きい。
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