研究課題
バリオン間相互作用、核力・ハイペロン力の決定は、現代の原子核物理および宇宙天文物理において最重要課題の一つである。中でも三体力の決定は、高密度物質の状態方程式の決定や、超新星爆発現象や中性子星の構造を理解する上で重要な役割を果たす。本研究では、HAL QCD 法を用いることで、三体力の格子QCD第一原理計算を行うと共に、物理点における二体力研究への展開を行った。本年度の成果として、主に次のようなものが挙げられる。1. 三体力の格子間隔依存性の研究を行った。従来は格子間隔 a=0.16fm のみの計算であったが、a=0.11fm の計算を行うことで、超近距離領域において離散化誤差の影響が大きいことが解った。一方で、これまで得られてきた近距離領域での三体斥力効果は、離散化による系統誤差と比較して、十分有意な結果であることが確認できた。また、二体力については a=0.22fm の計算も行い、やはり超近距離領域において離散化誤差の影響が大きいことが解ったが、散乱長などの物理量に対しては、超近距離領域の効果は位相空間因子により抑制されるため、離散化誤差の影響は小さくなることも解った。2. これまでの三体力研究において、相関関数の計算を劇的に高速化するアルゴリズム、Unified Contraction Algorithm (UCA) を開発したが、この手法は汎用的なものであり、二体力の格子QCD計算においても有効である。そこで、UCA を二体核力・ハイペロン力の計算コードに実装し、その他の工夫も合わせ、二体力計算の数十倍の高速化に成功した。このコードを用いた物理点二体力計算が、現在京スーパーコンピュータを用いて進行中である。物理点においては、計算資源の制約から、当面二体力計算に注力しているが、そこで得られたデータは、将来の物理点三体力計算においても重要なインプットとなる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 6件)
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