研究課題/領域番号 |
24740149
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒柳 幸子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (60456639)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 重力波 |
研究概要 |
当該年度は宇宙ひもからの重力波に関する研究に取り組んだ。初期宇宙に生成される可能性がある宇宙ひもは生成後、衝突を繰り返しつなぎかわっていくことで、ループ状になるとともにカスプやキンクと呼ばれる特異な形状をひも上に持つようになる。これらの構造から放出される重力波は振幅が大きく幅広い周波数に渡るため、多種の将来実験で検証できる可能性がある。 本研究ではまず数年後に稼働予定の次世代型地上重力波検出実験を用いて、宇宙ひもに関してどのような情報を得ることができるかを調べた。本研究の特色は宇宙ひも起源の重力波に単発で検出されるバースト重力波とバーストが重なり合って作られる背景重力波の2種類があることに着目した点にある。同じ重力波検出器から得られる2つの異なる観測量は宇宙ひもに関して独立な情報を持ち、異なる情報を得られることを示した。さらに、その理由は2種の観測量が異なる時代の宇宙ひもの情報を持つことに起因することを明らかにした。 続いて、宇宙ひも探索には直接検出実験の他にも宇宙背景放射の温度揺らぎや偏光、またパルサータイミング実験による重力波の間接検出があることを踏まえて、各種実験の情報の相補性を調べた。その結果、これらの実験がそれぞれ異なる周波数の重力波を見ることで、異なる時代の宇宙ひもの情報を得られる点を明らかにした。 以上の研究により、多面に渡る宇宙ひもの観測的検証を統括的に調べることで、各種将来実験を宇宙ひもの制限に役立ていくための明確な指針を示した。 また、重力が質量を持つmassive gravity理論の研究にも取り組み、この理論の枠組み内ではインフレーション起源の重力波が特徴的なスペクトルの形を持つことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は「宇宙ひも」と「宇宙磁場」を起源とする重力波に対し、将来観測を見据えた理論予言を行うことにある。二年という期間のうち、当該年度では宇宙ひも起源の重力波に関する研究を予定としているところまで全て終えることができたため、研究は順調に進展していると言える。また、宇宙磁場起源の重力波に関しても関連する先行研究の調査や基礎的な計算手法の構築はすでに終え、次年度で残り半分の研究を進める準備は十分に整っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は宇宙磁場起源の重力波に関する研究に取り組む。まずは、宇宙磁場が生成する重力波をグリーン関数を用いた解析的な手法で大まかに見積もり、先行研究との整合性を調べる。必要であれば数値計算を用いてより詳細なスペクトルを計算する。最終的には将来実験における重力波の検出可能性を調べ、初期磁場生成の物理に関してどのような情報につながるかを議論する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度となる次年度の研究費は主に研究成果の発表のための出張費に用いる。前年度の成果だけでなく、次年度の研究も成果が出次第、順次国内外の学会や研究会で報告を行う。また、新たに数値計算が必要な場合、有料ソフトウェアの更新費に用いる。
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