当該年度は宇宙磁場起源の重力波について取り組んだ。磁場の影響を含んだ重力波の発展方程式を半解析的な形で解くことで、磁場の生む重力波のスペクトルの計算を可能にした。この結果に基づいて将来の重力波検出実験における検出可能性を議論した。本研究の成果は現在論文としてまとめているところである。 また、2013年3月にPlanck衛星により宇宙背景放射(CMB)の最新の観測結果が得られたことを受け、Planck衛星のデータを用いて様々なインフレーション(宇宙初期の加速膨張)の制限に取り組んだ。まずは単一場のインフレーションモデルに関してPlanckのデータ解析チームが扱っていないモデルを含めて網羅的に検証し、様々なモデルに対して現時点で最も強い観測的制限を与えることに成功した。また、インフレーション期の重力の振る舞いが異なるブレーンワールド模型と非可換時空の影響下でのモデルへの制限にも取り組み、多くのモデルが観測的に棄却されることを示した。 さらに、将来の重力波検出実験におけるインフレーションと再加熱のモデルパラメータの決定精度をを調べる研究も行った。BICEP2実験がインフレーション理論の予言する重力波の痕跡と思われるCMBのBモード偏光を観測したことで、直接検出への期待が一気に高まりつつある。本研究はそういった直接検出に向けて詳細な理論予言を提供し、今後の方針に役立つものである。 また、連星系が放出する重力波に関する研究にも取り組んだ。連星系のブラックホール周辺にダークマターが密に分布する場合、ダークマターが作る重力ポテンシャルにより重力波波形が変化する。それが将来実験で十分検証可能であること、さらにダークマターの密度分布を探るのに役立つことを明らかにした。さらに、ダークマターによる動的摩擦が波形に大きな影響を与えることも突き止め、現在新たな論文を執筆中である。
|