研究課題/領域番号 |
24740152
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
兵藤 哲雄 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (60539823)
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キーワード | ハドロン分光学 / ストレンジネス / 少数系 / 共鳴状態 |
研究概要 |
本計画ではK中間子核子間の相互作用の研究を中心に、ハドロン間の相互作用や動的に生成されるハドロンの内部構造の解明の研究を行う。今年度の主な成果は以下の2つである。 1)閾値近傍s波共鳴状態の構造:安定な束縛状態の構造を議論する指標として、波動関数の繰り込み定数で決まる複合性という概念があるが、共鳴状態の場合は平均自乗半径と同様に複合性は複素数となる。本課題では、閾値近傍の共鳴状態に注目することで、有効レンジ展開から共鳴極の位置のみで散乱振幅が決定できることを指摘した。さらに、この場合複合性自体は複素数になるものの、負の有効レンジの大きさが状態の構造と関係していることを議論し、実験の観測量と内部構造が関係することを明らかにした。閾値近傍の共鳴状態が有効レンジ展開によって明快に理解できることを示し、複合性の詳細な定式化や、有効レンジ展開の係数の物理的意味などを議論した。 2)現実的K中間子核子ポテンシャルの構築にむけた取り組み:近年のSIDDHARTA実験によるK中間子水素の精密分光により、K中間子核子相互作用の研究は新たな段階に入っている。この実験結果を取り入れたメソンバリオン散乱模型も構築されつつあるが、少数計算の遂行にはアイソスピン対称性の破れを考慮したチャンネル結合K中間子核子ポテンシャルの構築が必要である。その準備段階として、カイラル動力学模型に基づいて、1チャンネル有効ポテンシャルを構築し、エネルギー依存性やLambda(1405)の極の位置などを議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施状況報告書の推進方策に基づいて研究成果をあげた。当初の計画では平成27年度に実施する予定であった複合性の共鳴状態への拡張を前倒しして行った。
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今後の研究の推進方策 |
まず現実的K中間子核子相互作用の完成を目指す。さらにその応用として、K中間子重陽子のエネルギーレベルの計算、J-PARCで実験予定のK-d衝突Lambda(1405)生成反応のスペクトルの解析も行い、理論計算と実験データの関連をつける。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属機関の異動に伴い、当該年度の旅費使用額が予定より少なかったため。 次年度の旅費として使用する。
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