研究課題/領域番号 |
24740159
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
重森 正樹 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 特任助教 (60608256)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 弦理論 / エキゾチックブレーン / ブラックホール |
研究概要 |
本研究の目的は、弦理論に存在するがその重要性が最近まで認識されていなかった「エキゾチックブレーン」の性質およびその弦理論での役割を明らかにすることである。 24年度は、エキゾチックブレーンの基本的かつ重要な性質の解明に集中した。例えば、エキゾチックブレーンの周囲では場の配位が捩れているため、その周りを1周しても場の配位が元に戻って来ず、多価性を持つ(モノドロミーと呼ばれる)。モノドロミーのある状況下では、電荷がエキゾチックブレーンを一周すると他の電荷になって戻って来るように見えるため、電荷が保存しないように思える。私は、このような状況下では電荷をどう定義するかが重要であり、適当な定義の元では電荷が保存することを示した。電荷保存はモノドロミーがある場合に起こる基本的問題であり、これを解決できたことは重要な成果である。その他にも私は、モノドロミーと超対称性との両立性等のエキゾチックブレーンの基本的な側面を明らかにした。これらの成果はPhysics Reports誌(インパクトファクター:20.394(2011年))に掲載が決定している。 また、研究実施計画においては25年度以降に実施すると述べた、ブラックホールの微視的物理とエキゾチックブレーンの関連についての研究に既に着手した。特に私は、ブラックホールの微視的状態のうち非常に簡単なものを摂動的に構成した。これはまだ特別な場合だが、もっと一般的でエキゾチックな微視的状態を構成するのに役立つと期待される。 なお、24年度の研究実施計画においては、近年発展している理論的枠組み “double field theory (DFT)” とエキゾチックブレーンとの関連を調べる研究について述べたが、DFTが24年度中にはまだエキゾチックブレーンを扱うために満足のゆく枠組みとなっていないと判断して25年度以降に行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上の「研究実績の概要」で述べたように、平成24年度は、エキゾチックブレーンの基本的かつ重要な性質を明らかにすることに集中した。研究対象のより深い理解は今後の研究を見通し良くするために不可欠であるからである。エキゾチックブレーンの持つモノドロミーの存在下では様々な過程が非自明となり、豊かな物理を生み出すということを見出すことができたのは予想外の進展であった。 また、研究実施計画においては25年度以降に実施すると述べた、ブラックホールの微視的物理とエキゾチックブレーンの関連についての研究を既に開始できたのも計画以上の進展である。現在はまだ非常に限られた場合の微視的な解を摂動的に構成する方法を開発したに留まるが、次年度以降の研究の基礎となると私は期待する。 いっぽう、平成24年度の研究実施計画において述べた、DFTとエキゾチックブレーンとの関連を調べる研究については当初の計画通り進展していない。しかし、研究実施計画に既に述べたように、DFTの枠組みを用いてエキゾチックブレーンを記述できなかったとしても別の方法を用いて本研究は可能である。さらに、24年度後半にかけてDFTの枠組みに関する研究(特に、現在DFTの制限となっている「強い拘束条件」を外す研究)が進展してきており、25年度以降の研究には利用できるようになると期待され、以降の研究の効率化がはかれると期待される。 上記のように、本研究には当初の計画よりも進展している点も進展していない点もある。私は、両方を勘案し、本研究がおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究により、エキゾチックブレーンの基本的かつ重要な性質で未解明な部分が多くあることが明らかとなったので、25年度においても、その部分をさらに掘り下げる計画である。これに関しては、私は既に、エキゾチックブレーンの分類についての研究を共同研究者であるde Boer氏と開始しており、この問題が数学的にはnilpotent orbitと呼ばれるものの分類と対応づけられることを明らかにした。私は、この対応を確立し、また、3次元超重力理論という枠組み内で具体的なエキゾチックブレーン解を構成する計画である。de Boer氏の所属機関であるアムステルダム大学に研究滞在して効率的に研究を進めたい。 さらに、ブラックホールの微視的物理とエキゾチックブレーンの関連についても、24年度に開発した、特別な場合に微視的な解を摂動的に構成する方法を発展させ、もっと一般的な解の構成を行いたい。研究の能率化のため、このプロジェクトに関する共同研究者であるBena氏の所属機関であるCEA Saclayにも滞在する予定である。 また、近年発展している、DFTから「強い拘束条件」を外す研究に基づき、エキゾチックブレーンのDFTの枠内での記述に関する研究も推進したい。CEA SaclayにはGrana氏などのDFTの専門家も所属しているので、彼女らと議論してDFTの理解を深める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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