研究課題/領域番号 |
24740161
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
小林 努 立教大学, 理学部, 准教授 (40580212)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 宇宙論 / 重力 / 初期宇宙 / インフレーション |
研究概要 |
本研究の目的は、最も一般的な(単一場)インフレーション模型にもとづいてインフレーション宇宙論のさまざまな側面(原始揺らぎの非ガウス性、再加熱など)を調べ、最新の精細な観測成果と照らし合わせて初期宇宙模型を特定するための基盤作りをすることにある。 本年度は、原始揺らぎの非ガウス性に関する研究を推進した。非ガウス性の定量化は、揺らぎの3点相関関数を評価することによっておこなわれる。そこで、最も一般的なインフレーション模型の枠組みで、通常は素朴に効果が小さいと考えられている原始重力波の寄与もすべて含めた完全な3点相関関数の表式を導出した。一般には複数の異なる項が非ガウス性に寄与するが、それら各項の波数依存性を明らかにしておくことにより、インフレーション模型を峻別したり、制限を課したりする際に役立てることができる。そこで、一般の場合に出現するすべての項について波数空間における「形」をプロットし、「形」が模型のパラメータにどのように依存するかを調べた。この「形」に関してはさらに詳細な解析が必要であり、また、実際の観測量である温度揺らぎに今回の結果を直接関連付けるために今後の研究が必要ではあるが、その段階に至る前の基礎的な研究は完了した。 上記研究と並行して、最も一般的なスカラー場と重力の理論の知見を、温度揺らぎ以外の他の天文学的観測と関連付ける研究にも転用した。具体的には銀河団の重力レンズ観測を念頭に置いて、余分なスカラー自由度をもつ一般的な修正重力理論に観測的制限を与えるための基礎研究をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に実施予定であった「温度揺らぎの非ガウス性の評価」の研究について、ほぼ予定通りの進度でプロジェクトは進行している。それに加え、本年度の研究成果のうち、関連する周辺の研究にただちに応用可能なものを利用して副次的な成果を出すこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
温度揺らぎの非ガウス性の評価に関する研究を引き続き推進する。特に、2013年3月末に発表されたプランク衛星による最新の観測結果との比較検討をおこなう。並行して、インフレーション終了後の再加熱期におけるスカラー場のダイナミクスに関する研究を開始する。最近指摘されている再加熱期のある種の不安定性の問題に着目し、まずはこの問題が真に普遍的なものなのか特定の模型に固有の問題であり簡単に取り除くことができるものなのかを明らかにする。これまでは単一場模型という枠内で最も一般的な解析をおこなってきたが、昨年度、これを複数場模型に拡張する試みに関して他グループの研究に重要な進展があった。その成果を本研究にただちに取り入れ、これまでに培った経験を活かしつつ最も一般的な複数場インフレーション模型の構築もおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
1,2度程度海外に出張し、国際会議に出席して情報収集をおこなうと同時に、研究成果を発表する。あるいは、密接に関連する研究をおこなっている海外の研究グループを訪問し、議論やセミナーなどを通じて情報交換をし、研究の完成度を高める。また、複数回の国内出張で学会・ワークショップなどに参加し、情報収集・研究成果の発表をおこなう。最新の数式処理ソフトウェアを購入し、効率的な研究の推進をはかる。
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