研究課題/領域番号 |
24740163
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木内 建太 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (40514196)
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キーワード | 重力波 / 数値相対論 / 中性子星 / 磁場 |
研究概要 |
ガンマ線バーストは宇宙最大規模の爆発現象であるが、その駆動源及び駆動メカニズムは未だに良く分かっていない。ガンマ線パルスの幅が非常に短いことから駆動源のサイズはコンパクトであり、また莫大なエネルギーが放出されることからブラックホールや中性子星の形成が関係しているというのが理論仮説であるが観測的な検証はなされていない。 そこで本研究では大質量星重力崩壊によるブラックホール形成の過程を数値相対論シミュレーションで調べ、重力波、ニュートリノ、電磁波信号を理論的に予想する。来るべきマルチメッセンジャー天文学の幕開けに備えて、これらの信号によりガンマ線バースト動力源を解き明かすことを最終目標とする。 一般相対性理論、核密度状態方程式、電磁場、ニュートリノ輻射場を同時に数値的に解かなければならないが、本年度では主に磁場に着目した研究を進めた。一般に磁場増幅の候補となる磁気流体不安定性は短波長であるため、大規模数値計算が必須になる。特に磁気回転不安定性は不安定モードが磁場の強さに比例するため、既存のスーパーコンピューターでこの不安定性を解像するのは不可能であった。我々は約80,000コアまでスケールする多層格子法を実装した数値相対論-磁気流体コードの開発に成功した。 まず第一段階として磁場の効果をより少ない計算コストで調べるために開発したコードを連星中性子星合体に適用した。大質量星重力崩壊では物理時間2-3秒のシミュレーションが必要とされるのに対し、連星中性子星合体では100ミリ秒程度が要求される。連星中性子星合体後に形成される大質量中性子星およびブラックホール―降着円盤内では十分な解像度を設定すれば磁気回転不安定性を解像出来ることが分かった。但し、ドミナントなモードは非軸対称モードであるため、不安定性の成長率は回転角速度の2-3パーセント程度である事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、2013年度までに輻射場と磁場を結合した数値相対論コードを完成させるはずであったがコード開発やテスト計算に予定より多い時間を費やした。 しかし、連星中性子星合体に適応した数値相対論―磁気流体コードは非常に良いパフォーマンスを見せており、また大質量中性子星内部での非軸対称磁気回転性不安定性を数値的に解像することに世界で初めて成功した。よってやや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は2013年度に開発した数値相対論ー磁気流体コードと輻射流体コードとの結合に取り掛かる。現在までのコード開発により4次元速度の空間3成分を発展させた後、規格化条件からローレンツ因子を求める作業を完成させれば結合は終了する。数値相対論―輻射流体コードのチューニングも既に完成している。2014年度前半をコード開発にあて、後半を本格的シミュレーションに充てる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりコード開発とテスト計算に時間を費やしたため、本年度使用予定であった論文出版費および国内/国際会議に必要な費用分が余った。また計算規模の問題からクラスターの購入を取りやめた。 本年度の余剰分は基本的にスーパーコンピュータのトークン購入代金および海外研究機関滞在に充てる。具体的には東京大学情報基盤センターのトークンを年間12ノ-ド、500,000円使用し残額を海外研究会滞在費に充てる。
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