本研究は、ハドロン分子候補である ラムダ(1405) の内部構造の理解を目的としている。本研究では ラムダ(1405) の崩壊粒子を3次元荷電粒子検出器で検出する。これまでの研究で電磁石の磁場と検出器内の電場の非一様性が検出器内の電子のドリフトを歪めるため、崩壊粒子の運動量測定の問題となっていた。この問題を解決するため、本研究では紫外レーザーを用いた較正システムを構築しラムダ(1405) の崩壊粒子の飛跡を高精度で測定可能にした。 まず、レーザー較正システムの光学系の試験を行った。紫外レーザーを光ファイバーやミラーを用いてアルゴンガスを用いた飛跡検出器に分配、照射しレーザーの軌跡を確認した。ミラーを用いた光学系で65マイクロメーターの位置測定精度が得られ、較正に十分な精度が得られることを確認した。また、低運動量粒子の運動量測定向上のために多重散乱の影響の小さいネオンガスを用いた検出器の試験を行った。ネオンガスでは荷電粒子によるイオン化で生じる電子が少なく信号が微弱になるため、低ノイズのアンプチップを開発した。ノイズレベルや増幅度、線形性を試験し十分な性能を確認した。このチップを搭載した読み出し基板を製作し、検出器からの信号を読み出すことで必要な性能が得られていることを確認した。また、既に稼働している LEPS ビームラインで水素標的を用いたラムダ(1405)粒子光生成の試験データを取得した。得られたデータからはラムダ(1405)、シグマ(1385) の生成が確認できている。本研究で開発したシステムを導入し3次元荷電粒子検出器を用いた崩壊粒子の検出とラムダ(1405) の生成率の測定を行ってゆく。ラムダ(1405)の内部構造について新しい情報を早急にまとめ、国際会議、論文などで発表してゆく。 また、本研究で開発した検出器や較正システム、実験の現状について国際会議で発表した。
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