研究課題
原子核研究の基本となる核力には二核子間力以外に三体力と呼ばれる多体相互作用が存在する。今までのほとんどの実験的研究ではその対象が核力の三体力のうちのアイソスピンT=1/2成分に限定されてきた。しかし近年、原子核の性質及びその現象や中性子星の存在を記述する上で、アイソスピンT=3/2成分の効果を取り入れる事が必要不可欠であることが理論的に分かってきた。本研究の目的は、近年完成した理化学研究所の不安定核ビーム施設RIBFにおいて得られるようになった大強度三重水素(3H)ビームを用いる事で、中性子3個の共鳴状態(3n)を生成し、T=3/2三体力に関する詳細情報を実験的に明らかにする事である。本研究の結果からは全く新しい三体力の側面が明らかにされると期待できる。本年度は本実験へ向けた準備として大きく分けて以下の2点を行った。1.前年度から宮崎大学の学生を中心として、3個の高速中性子を中性子検出器NEBULAで同時測定するための、本物のイベント選別方法、検出効率、及びエネルギー分解能等を検討するためのシミュレーターの開発をGEANT4プログラムを用いて行ってきたが、そのシミュレーターをさらに改良し、トリガー条件や検出器の追加の必要性を検討した。2.前年度から京都大学、甲南大学との協力の下進めてきた、固体重水素標的のテスト製作に成功した。さらにアクティブ重水素ガス標的をしようした物理データ取得を放医研で行った。一方で、前項のシミュレーターを用いて液体重水素標的の使用可能性を検討し、開発に着手する事とした。3.ワークショップや国際会議に参加し、国内外の理論研究者と三中性子共鳴状態に関する最新の理論予想について情報交換を行い、実験方法及び解析手法に関する議論を行った。
3: やや遅れている
当初は平成26年度に理化学研究所RIBF施設で実験を遂行する予定だったが、未だにビームタイムを獲得できていない。一方で、既存のNEBULA検出器に加えてドイツからNeuLAND検出器が今年度からRIBFに導入されることになった。NeuLAND検出器を追加で使用する事により、本研究の結果は大きく向上する事が期待されるため、シミュレーションを進めて実験計画を改良したい。
まずは理化学研究所RIBF施設におけるビームタイム獲得を目指す。また平成26年度に進めたシミュレーションにより、本実験の計画を変更し、液体重水素標的、荷電粒子VETO検出器の使用が望ましい事が判明したため、それらの開発を行う。また、新たに導入されるNeuLAND検出器を使用した場合のシミュレーションを行い、さらなる実験計画の改善を行う。
平成26年度中のビームタイム獲得が適わなかったため、実験遂行に伴う旅費の執行、国際会議における成果発表に伴う旅費の執行が出来なかった。
申請者及び宮崎大学院生2名分の実験遂行に伴う旅費(宮崎―埼玉間)として30万円執行する。また国際会議における成果発表に伴う旅費として29万円執行する。
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Few-Body Systems
巻: 55 ページ: 729-732
10.1007/s00601-014-0868-5