研究課題/領域番号 |
24740175
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
明 孝之 大阪工業大学, 工学部, 講師 (20423212)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核力 / テンソル力 / 殻模型 / 共鳴 / 不安定核 / 高運動量成分 / クラスター / 複素座標スケーリング法 |
研究概要 |
1. テンソル最適化殻模型(Tensor-Optimized Shell Model, TOSM)を用いてLi同位体の構造とテンソル力の関係を調べた。相互作用には自由空間の核力を用いた。結果、Li同位体の励起エネルギースペクトルは、各レベルの位置、順番も含めて良く再現された。6Liでは、アイソスピン量子数が0の状態ではLS結合が確認され、テンソル力の寄与が大きい。これはテンソル力に重要なスピン量子数S=1をもつ重陽子を含むα+d構造と関係する。一方、アイソスピン量子数1を持つ6Liの状態では、S=1の成分が減るためにテンソル相関が弱まり、jj結合であった。より中性子過剰な7Li,8Li,9Liでは、それらの基底状態において、一体場的なjj結合が共通に得られた。これらのjj結合の配位から核子が励起することでテンソル力を稼ぐ機構も解明した。 2. 8Beには、基底状態から始まる分子的な2α構造を持つ回転バンドとともに、α崩壊が好まれない高励起状態が存在し、2面性がみられる。これらの構造についてTOSMを用いて調べた。結果、励起エネルギースペクトルをほぼ再現することが分かった。ただし両者の相対エネルギー差は実験値より小さい。これは基底状態の記述において、TOSMに2αクラスター的な配位の導入によるエネルギーの稼ぎが必要であることを示唆している。 3. 陽子過剰核の共鳴構造、および中性子過剰核との鏡映対称性を調べた。対象核は8Cであり、α+4陽子の模型により5体共鳴状態を求めた。共鳴の記述には複素座標スケーリング法を用いた。その結果、8Cの共鳴エネルギーは最新の実験値を再現した。また鏡映核である中性子過剰核8Heとの鏡映対称性は良いことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テンソル最適化殻模型を用いて、原子核のテンソル力の働きを調べる課題については、He、Li同位体と成果がまとまった。現在はBe同位体の解析を進めており、より質量数の大きな原子核への適用が進んでいる。またクラスター状態を如何にして記述していくかという新しい課題も見えつつある。 多体共鳴状態の研究については、最大で5体の共鳴状態を求め、その構造を調べる目的が達成された。この成果を基盤にして、今後は不安定核を中心により多くの共鳴状態の性質を調べることができる。
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今後の研究の推進方策 |
テンソル力の研究については、He同位体、Li同位体の成功を踏まえた上で、Be同位体を進める。また12C、16Oを含む4N核の解析を行う。特に一体場的な構造と分子的なクラスター構造という異なる原子核構造におけるテンソル力の働きを解明する。クラスター構造については、テンソル最適化殻模型(TOSM)の拡張を視野に入れる。 TOSMで得られた波動関数にはテンソル力がもたらす高運動量成分が含まれる。この特徴を検証するために、原子核内において核子がもつ運動量の分布を調べる。実験との対応を考えるため、具体的には核子を剥ぎ取る核反応への適用を行う。 多体共鳴状態の研究については、α粒子を芯として、そのまわりに複数の陽子、または中性子が結合することで形成される共鳴状態の分析を終えた。今後はさまざまな芯核の場合における、陽子過剰、または中性子過剰な共鳴状態の形成機構を調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、主として、1)国際会議、国内研究会、学会等における研究成果の発表、および情報収集のための聴講を行うための旅費、2)研究に必要な原子核関係の資料、図書の購入に充てる。
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